やなせたかし氏、ご逝去。

 なんというか、まさに衝撃でした。
 やなせたかし先生が、13日、心不全で亡くなられました。94歳でした。

 いえ、お歳がお歳ですし、体中病気やらなにやらでボロボロなことは何度も書かれてたので不思議ではないのですが、なにせそのお歳でずっと色々されてきた人なので、100は生きると思っていたのです。昼間、ノートPCを開いてネットを見てたら「やなせたかし氏、死去」という速報リンクが。え、と思わずクリックしたら本当でした。以前デマが流れたことは有りましたが、時事通信他のニュースになっていては、疑いようもありません。

 中学校のころだったか、何かの際に日本の詩集とかちらほら見ていたら、小さな絵本のような詩集を見つけたので、ふと買ってみたのです。それがやなせ先生の『人間なんてさびしいね』という詩集でした。韻を踏んだ、どこかわびしさも感じる詩とあっさりした絵本の絵柄なのに引きつけられるイラストがなんだか気に入って、買ってしまったのです。

Pict00991_2


 そのころはやなせ作品といえば『やさしいライオン』くらいしか知らず(まともに読んだことはなかったけれど)、『アンパンマン』もマイナーでアニメはまだだったけど初期の絵本は知ってたかな、それくらいでした。サンリオの本や雑誌『詩とメルヘン』で作品を書かれてたことは知ってましたけど。『手のひらを太陽に』の歌詞をやなせ先生が書かれたというのもまだ知りませんでしたが、その後知ったときに「なるほど、確かに」と思ったのはこの詩集のおかげでしょう。シニカルな目線のものもあり、ひとりで生きることの自由さ、さびしさ、むなしさなどなど。やさしくやわらかく明るそうで明るくない世界がありました。

Pict01001_2

 心と心がふれあって
 なんにもいわずにわかること
 ただそれだけのよろこびが
 人生至上の幸福さ
 たったひとりで生まれてきて
 たったひとりで死んでいく
 人間なんてさびしいね
 人間なんておかしいね


 そんなわけで、私のやなせ初体験はこの詩集といっていいです。山高坊を被る、縦長に丸っこい誰でも無いひとの姿とか、影が入って顔の見えない青年とか。さらっとついたアンダーなパステルカラーとか。よく絵柄まねしてたりもしました。まあなんですね、これが私の中二病だったんでしょうね。


 生まれたときは
 ひとりだったし
 死ぬときも
 ひとりだもの
 いまひとりだって
 さびしくない
 いや
 ちょっとさびしい
 なぜだろう


 というか、この歳になるとこの詩集の詩はアタタタタ……と切実に感じてしまったりします。中二病ネタがシャレにならんことに。この詩集の初版は1976年。やなせ先生が1919年生まれなので、57歳のころです。これが人生というものか……まあ読んでるとなんとなく、これでもいいかなと元気……というか平常心をくれた詩もありました。あ、でもやなせ先生はこのころちゃんと結婚されていて、一人じゃなかったわけで。……おいおい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

『メトロポリス』……完全版?

 イレギュラー・エレクトロンさんとこで知りました。

 SF映画史上最高傑作のひとつと言われているフリッツ・ラングの『メトロポリス』。その完全復元版というものが、Blu-ray Diskで発売されるそうです。amazonでは26%引きで予約中。それでも5,284円で、最近の低価格化に逆行してますけど。

 よく知らない人のために簡単に説明すると、映画史上の黎明期(もちろん無声──サイレント映画のころです)、1927年にドイツ(正確にはワイマール共和国時代)で製作されたそれまでにないほどの大作SF映画が『メトロポリス』です。監督はフリッツ・ラング。原作で小説版も書いたのは当時の妻のテア・フォン・ハルボウ。
 お話は今となってはわりと単純なのですが、当時としても重厚な美術や世界観は世界をあっと言わせました。ただその反響のほとんどは、実はアメリカでずたずたに編集された超短縮編集版によるもので、実際私が昔見たものも90分ほどのものだったと思います。ドイツでの初公開時以来、本来の長さのものはすでになく、それから数回見つかったフィルムを付け加えての再編集版やらが公開されたものですが、2008年、それまでにない長い時間のフィルム(16mmポジだったそうですが)が見つかり、新しい編集版への期待が高まっていたとか。

 それが今回、復元編集HD化されて、BDで無事に発売されることになったと。それまでの最長より30分ほど長く、約150分(米wikipediaには153分)。日本の販売は紀ノ國屋書店。よくやった! といわけでこれは買うしかないですね。いやまあ古い映画ファンとかSF映画ファンならですが。

続きを読む "『メトロポリス』……完全版?"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

ストリジルって知ってます?

 現在、横浜美術館にて「ポンペイ展 世界遺産 古代ローマ文明の奇跡」というのを開催してるそうです。

 無論行けるはずもない展覧会などを何故とりあげたかというと、いま漫画『テルマエ・ロマエ』とのコラボ企画をしているそうで、これがまた冗談が過ぎる(笑)企画なのです。

続きを読む "ストリジルって知ってます?"

| | コメント (5) | トラックバック (0)

ハーバード 白熱教室

 今期、NHK教育で日曜の夕方18時から放映されている番組です。
 アメリカはハーバード大学の、政治哲学のマイケル・サンデル教授の授業があまりに人気あるので、ついにTVでの放送を始めたそうで。それの日本版というわけです(二カ国語放送ですので、字幕よりわかりやすいですし、英語の勉強にもなる?)。

 題材は“Justice”。「正義」ですね。全24コマの授業を一回約1時間で2コマ分、全12回の放送です(1Lectureは大体30分ですが、編集済みなのかどうかは不明)。すでに3回分放送済みですが、一昨日と今晩、その3回分の再放送が深夜に行われました。そして今日日曜日の18時に4回目が放送されます。

 記事書くのが遅れたのでいまさらだし、前回まで見てない人にはとっつきにくいかもしれませんが、実におもしろいので4回目からでもご覧下さい。お薦めです。

 内容とかはこちら、NHKの公式サイトです。講義一覧もあります。放送終了後に詳細が追加されますので復習にもなるかな。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

「非実在少年」とその定義者とは、キホーテと風車のどちらなのか。

 簡単なようであんまり難しい問題なので(無論ただ反論するだけなら簡単だが)取り上げようとしてもなかなか難しく、放ってました。いろんなところでまとめ記事ができてたり、コメントがありましたが、それらもかなりの数で要点絞り込むのが大変。
 しかし、今日GIGAZINEさんが長文でしっかりした記事にまとめていたので、それを紹介して代えたいとおもいます。

 『「非実在青少年」問題とは何なのか、そしてどこがどのように問題なのか?まとめ』

 まあGIGAZINEさんの記事もかなり相手をばっさり切ったものなのですが、ほぼこれに同意します。

 わたしがこの問題を知ったのは、上の記事にもある2/27の「痛いニュース」からでしたが、3/7あたりからの怒濤のごとき展開は、そこまで綿密にウォッチしてなかったのでこれ読んで知ったものも。大手新聞社のアレな態度には苦笑すら出てきませんが、ネットでの個人の動きには感服します。長いので時間かかりますが、GIGAZINEさんの記事だけでなくリンク先の元記事もちゃんと読むこともお薦めします。

 たとえこの条例案になんのアクションも起こさない起こせないひとでも、娯楽メディアを楽しむ人、発言の自由を守ることに意味があることを信じる人には、是非読んで知ってもらいたい事柄です。この条例案が通ろうが通るまいが、あちらとこちらにこういう動きがあったということを知るのはこの社会に生きるものとしては大切です。外国からの旅行者でいずれ帰る場所が他にある人か、はたまたこれから死ぬ、社会がどうなっても関係ないひとでもない限り。それくらい、この問題の根が深く、また一本の樹を根こそぎ掘り出したらその周囲がどうなるか、わかってない人たちが起こした問題でもあります。


 うちの意味深なタイトルは、単にアレなアレを皮肉っただけです。なんとなく想像できるなら、その通りです。

続きを読む "「非実在少年」とその定義者とは、キホーテと風車のどちらなのか。"

| | コメント (4) | トラックバック (0)

日本の漢方薬の危機? 寝耳に水。

 連日続いて何かと問題視されてる事業仕分けですが、新聞でもTVでも全く聞かないうちに、えらいことが決まっていたようです。

 ことの起こりはどうやら11月11日の仕分け。漢方薬等(うがい薬と湿布薬なども対象内)は薬局でも買えるものだから、保険適用外にしませんかというもの。
 ググると、なるほど大手でも殆どニュースになってません。ココとかココくらいで、詳しくはココなどが取り上げてます。

 【ニコニコ動画】行政刷新会議WG「事業仕分け」(2009/11/11・2-5)">の13分前後あたりに少し、58分あたりから最後のとこで少し、漢方薬の話が出てきます。ジェネリック医薬品の話とまぜこぜになってるのでわかりにくいですが──ジェネリックをもっと推奨しようという話ですが、その代わり患者負担にして使わせようなんて方法も出てます。


 どうにも詳しい資料が見られないのですが。行政刷新会議のサイトから落とせる中には漢方薬についての詳しい資料無し(第2会場評価結果の11日)。結果についても動画の最後に言われたことくらいで、ただ「見直し」とだけ、詳細は不明。動画最後のほうの発言によれば、漢方薬を保険外にするというのは財務省が進めてるようですね。

 これに漢方関連や医師からは当然反対(薬事日報のツムラ社長談)、署名なども集めて出す模様。上のリンクのうち、NSJ日本証券新聞の記事によればみづほ証券が問い合わせたところ、「市販品類似薬の範囲を定めることは『事業仕分け』になじまないということでただし書きとなった」とあります。厚生労働省の管轄に移ったことで、漢方薬の保険外適用のリスクは低いと。

 これが本当に漢方薬も含めてのことなら、社団法人日本東洋医学会の集めようとする署名は過剰反応だろうという人がいるのもわからなくもないですが、可能性が低くなっただけで可能性がないとはいえません。というか民主党の下だとほんとに何が起こるかわからない。民主のいうように、世界標準にとか米ではとかそういう基準でと言うのなら、議題にあがった以上、実際に意見を述べずに厚生労働省まかせなんてことはありえない。だから署名を出すことを過剰反応とか言うのは間違いでしょう。

 最初に知ったソースはココからココ。前者は2ちゃんねる、後者は個人のブログ記事です。後者はまあ途中から妄想入ってますが、個人的には妄想でないと断言もできないところが怖い。100%断言できるものなどこの世にはありませんが……それにしても。いやほんと、民主なんとかツブレロ。

 署名は、一回目締切が11/30、二回目が12/7だそうです。署名するかどうかは個人の判断で。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

『この世界の片隅に。』下巻発売、完結。

 こうの史代の漫画『この世界の片隅に』の下巻が発売されました。
 無論これが最終巻で、完結。このあとに完結編とかはとりあえず出ない模様。

 雑誌「漫画アクション」はなぜか滅多に見かけないので連載中は殆ど読んだことはなく(連載が毎号でなかったせいもあるかな)、ほぼ単行本が初見でした。おかげでじっくり読めたと思います。これまでの作品と同じような作りなのですが、集大成というか、それぞれで使った漫画の文法を全部取り入れた感じ。無論大長編ではないので取り入れたといってもその分ストーリー漫画としての書き方は短くなってたり、ギャグ?というかコメディタッチの部分もオチに使われる場合が多く、新聞の四コマ漫画の拡張版という感じの話もありました。

 また、とくにこの下巻前半は情報が多くてちょっと忙しい漫画でもあります。上部に妹尾かっぱさんの著書のように当時の情報が図解されていて下部に主人公らの物語があったり、呉の軍港としての歩みが年表と平行して軍の組織をツリー状に表図されていたり。それがまた細かい。
 年表のエピソードではよく見ると一人の人間の絵が年代を重ねる軍組織の図の間にはさまるように描かれてますが、後半になっていくと主人公の義父(軍の技術系で働く技師)の半生が同時に描かれているのだとわかってきます。最初は母の背に背負われる子供、次第に大きくなり軍の技術部で働き、軍備縮小の折りには出て行く(リストラされます)し、拡張時にまた戻ったり配置変換されたりして、子供(主人公の夫)も生まれ、最後は普通のコマで主人公が嫁ぐ前の家族の絵になっていきます。

 しかし見事な傑作です。短くまとまりがある『夕凪の街 桜の国』のほうが日常の中に差し込む悲劇をよく表現し、完成度も高いかもしれませんが、こちらは長い時間(物語上で主人公が子供のころから戦後まで)描かれている分、戦前戦後の営み、日常がより分かり、のちの悲劇がずっしりくる感じです。下巻では戦争も激しくなり、主人公の身近にも悲劇が起こります。それでもなお、普段の生活でのちょっとした笑いも、終戦における憤りも悲劇に対する気持ちも描かれた上でたくましく──というかおだやかに日常を生きていく人たちの物語。

 戦前戦中戦後の暮らし向きが細かく描かれているだけに実際どこまで真に迫っているかはわかりませんが、そういった文化的な側面もあわせもつ連続TV小説的ドラマとしても楽しめますので、若い人(って自分も含めてそういう生活を知らない戦後世代)にも読んでほしい漫画ですね。重いし時間がかかるけど、上中下巻、一気に通して読むとまたいいかも。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

村上春樹、エルサレムでドン・キホーテになる。

 先日、作家の村上春樹さんがイスラエルにて小説の賞を獲ったので、授賞式に出たというニュースをTVでやってました。イスラエル最高の文学賞であるエルサレム賞というのは浅学な私は初耳で、村上春樹さんが受賞したというのも、式に出ることに反対意見があったというのもニュースを見て初めて知りました。まあ反対派がいることは容易に思いつきますが。

 ただ、上のリンクのニュースでも少し書かれているように、村上春樹さんが出た理由はどちらかといえばその場で意見を言うためだったようです。TVではただ反対意見であるくらいで内容はほぼ出なかったのですが、さすがネットでは色々意見があって原文も和訳も色々と出てました。和訳は共同通信でのものもあれば個人のものもあるので、細かいニュアンスが違う場合もありますが、まとめページが作られていたのでそこから適当なものを紹介してみます。

 今回後半で自分の意見がわかりにくい上に長いので、紹介するリンク先を見てご自分で判断してそこで終わるのが良いかもしれません。私の戯言(たわごと)はスルーして。

 ああ一応先に言っておきますが、私は村上春樹の本は古いもの(『パン屋再襲撃』等の頃)を確か二三冊ほど読んだことがあります。ありますが、正直内容を全く覚えてないので、春樹マニアというわけでも村上文学ファンというわけでもありません。文体に拒絶反応を示した覚えはないので、普通に読んだはず。

続きを読む "村上春樹、エルサレムでドン・キホーテになる。"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

田中路子という明治生まれの女性が欧羅巴にいた。

 田中路子、またの名をFrau De Kowa(デ・コーヴァ夫人)。
 ネットでふと見かけたお名前に聞き覚えがなかったので検索したところ、なかなか豪胆というか凄い人だったようです。

 高名な日本画家田中頼璋の娘として1909年浅草に生まれ、オペレッタや映画界で活躍した恋多き女。身分違いの恋から目を覚まさせるためにオーストリアはウィーンに留学させられたもののあちらでも自由奔放、18歳で36歳年上のコーヒー王ユリウス・マインルの求婚を受け結婚したのち、歌手として花開き夫の許しを得て恋に生き、二度目の結婚相手、当時ドイツの国民的俳優だったヴィクトール・デ・コーヴァと出会って、前夫と円満な離婚。そして彼が父代わりのような立場で再婚に立ち会い、その後は歌手と俳優生活とともに私設領事館のごとき家庭を持ち、留学生らを積極的に支援したという。

 ちなみに1909年で検索すると、女優でいえばあの田中絹代さんや杉村春子さんと同い年。松本清張や大岡昌平も同じ年でした。

続きを読む "田中路子という明治生まれの女性が欧羅巴にいた。"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

世界の名作アニメ『ペルセポリス』

 美術館ホールの夏のアニメ上映会、二日目の三本目がこのタイトル。

 『ペルセポリス』 2007年フランス。

 ペルセポリスとは現在のイランにあった古代ペルシアの都。今は遺跡が残ってます。タイトルに使われていますが、直接ペルセポリスに絡むお話ではありません。話が進めばわかりますが、隠喩でしょう。

続きを読む "世界の名作アニメ『ペルセポリス』"

| | コメント (0) | トラックバック (0)