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『LAST PICTURE SHOW』 by 南佳孝 吉田保リマスタリングBSCD2 A面

 さて今回紹介するは、先日購入した三枚のうちラスト。CD発売当時も買っている──というかこれまでただ一枚持っていた南佳孝の10thアルバム『LAST PICTURE SHOW』のリマスター版です。


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 オリジナル盤は、発売当初に買ってかれこれ三十年近く、時折聴いていた、文字通りマイフェイバリットCD。映画好きなら堪らないコンセプトアルバム、裏表紙のシブい白黒写真、どこかで聞いたタイトルのオンパレードに、曲も(ラジオなどで)聴かずに買った覚えが。果してその結果は……といえば、実に大当たりでした。いえ、当時から今になっても実はモチーフとした映画で観てないものは多いんですが、モチーフ関係なく良い歌ばかりで、アルバムコンセプトのイメージに全く外れのない構成と歌いっぷりに、南佳孝といえばコレという刷り込みがなされたくらいです。それまで「スローなブギにしてくれ (I want you)」のイメージだった南佳孝が、私の中ではこれ一枚に。大好きなアルバムは色々あれど、青春時代を思い出させるのは、大瀧泳一の『A LONG VACATION』、ナイアガラの浜田省吾の『DAWN BY THE MAINSTREET』、オフコースの『SELECTION』二枚、EPOの『DOWN TOWN』等くらいですかね。あ、アニメは別腹で。

 このアルバムの全曲、作詞は松本隆、作曲は南佳孝、編曲は井上鑑。モチーフが映画というジャンルなせいか、『冒険王』以上にコンセプトがしっかりしたアルバムです。
 当事のオリジナル盤とリマスター盤の違いですが、リッピングしたものでの聴き比べですと、音圧が若干厚くなってる気がする。ぶっちゃけ同じボリュームで少し大きく聞こえるという感じですが、それでも昨今のCDと比べると少し小さい。まあ最近のCDの音が大きすぎるんだと思います。アンプのボリュームを上げるとちょうどよく音が響きますね。音も、大きすぎるCDのように割れることもありません。

 ところで、今回データを検索してるとVictorの配信サイトHD-Audioにて、今回の吉田リマスタリング版のハイレゾ配信が行われているのを発見。ハイレゾといってもFLACの96kHz/24bitデータですが、それでもCDより解像度が高いわけで。こっち買えば良かった気もしないでもない……が、ディスクの所持やライナーノーツ読むのも楽しみの一つだからなぁ。まあ『LAST PICTURE SHOW』は前のCD持ってるから、ハイレゾ版買ったほうが良かったかもしれない……トホホ。
 ああ、上のリンク先で各曲40秒ほど視聴できますから、聴きながら以下の感想をどうぞ。

 1曲目は「ダイナー」。1982年の米映画『ダイナー』がモチーフ。ダイナーとはプレハブ式の簡易店舗のレストランのこと。映画ではあの大きさで移動式らしいですが(屋根がトレーラーのコンテナか古いバスのような形)。ミッキー・ロークやケヴィン・ベーコン、スティーブ・グッテンバーグら、その後の青春スターが主役張ってます。『アメリカン・グラフティ』より少し前の1959年が舞台で、その頃の生活様式、音楽が彩り豊かに描かれてますが、青春モノらしい若者のはっちゃけぶりはあまり変わらず。私はこれはTVで観たと思いますが、ほぼ覚えてません。ちょうど今年BDでも出たので、今から観るのも良し。
 歌詞は、映画さながらに毎晩ダイナーに集まってバカ話してた青春時代を現在から振り返るという感じのノスタルジックなもの。舞台はいかにもアメリカなんだけど、やってることは結構何時の時代の若者でも連想されるものでなんとも親しみを感じる。もっともコレを聞いてた時分の私は車も持ってないし、レストランに溜まるような仲間もいませんでしたけどね。田舎の高校生が溜まるといえば、ゲーセンかゲーム機置いてる駄菓子屋くらいですよ(喫茶店は見つかったら停学よ)。曲は実に良い。1曲目にふさわしいつかみです。
 「B面の曲のように 地味な青春
  だけど針落とせば 涙でにじむ あの日のスクリーン」
 「B面の曲のように 忘れ去ってた
  だけどまた会いたい あの懐かしい 時代と友達に」
 うん、これよりもっと地味な青春だった。ところで映画や歌詞でちょっと驚くのが、50年代だといわゆるアメカジぽさはあまりない。
 「黒いジャケットにベージュのタイ 斜めに町を見つめてた」
 そう、写真や動画見ると、ミッキーやケヴィンが着けてたのは、ごく普通のジャケットにシャツ、ネクタイなんですな。まあ舞台がボルチモアという北部東海岸の歴史ある古い町というのが関係してるのかもしれませんが(いや米の歴史よく知らないから想像)。60年代に入ると衰退していったのだそうで、映画の時代は最後の古きよき時代だったようです。そう考えると、歌詞のノスタルジーがよく分かります。

 2曲目は「ミーン・ストリート」。モチーフは1973年の米映画『ミーン・ストリート』。面倒なので今後は省きますが、このアルバムの各タイトルは全てモチーフの映画タイトルです。この映画の監督はマーティン・スコセッシで、出演はハーベイ・カイテル、ロバート・デ・ニーロ他。スコセッシとデ・ニーロといえば『タクシードライバー』ですが、その前のものですね。私はこれは未見。舞台がニューヨークのせいか、年代があとのせいか、無軌道ぶりが『ダイナー』より酷く、どうしようもなくなる青春もの、らしい。動画見るとOPに私でも聴いたことある「Be My Baby」が流れてる。ザ・ロネッツという女性三人組(メインボーカルのロニーの愛称がロネッツ)のヒット作ですが、これ1963年の歌。ということは映画の舞台は60年代なんだろか?
 曲調は「ダイナー」より明るくテンポも速くてノリもいいけど、歌詞は似てるようでもっとワルなやつらの青春の歌。街を闊歩したかつての仲間達を歌い懐かしむ。もろもろの固有名詞が、当事の米の若者文化らしさ。両切りのウィンストン、Lee、アレサ(・フランクリン)。
 「米軍のフライトジャケット ジーンズはLee 俺たちが風を切って 歩いた街」
 「店を出るともう夜明け 影の川」

 3曲目は「ジョンとメリー」。日本だと神田川の世界か英語の教科書の名前のようですが、1969年公開のモチーフの映画はもっとからっとしたせつなに生まれる愛、ボーイミーツガールの映画らしい。コレも未見。主演はダスティン・ホフマンとミア・ファロー。『卒業』のあとなのでいかにもやるせない感じの若きダスティンが一夜をともにしたらしいミアとの出会いに何かを感じる。
 曲はロックな前の二曲よりメロディアスな曲。ちょっとナイアガラっぽいところも。アレンジも含めて。歌詞は映画と同じく、目が覚めてみれば知らない女の子が部屋にいたというシチュエーションで、このまま一緒にいそうだけど、それもいいかなと納得する。
 「追い出さなきゃ この部屋に 居付きそうな 悪い予感を 感じてるよ」
 「人を好きになるなんて 何年ぶり 自己紹介もまだしてない ありふれてる 名前だけど」

 4曲目は「ラスト・ショー」。1971年公開のこの映画の原題が「THE LAST PICTURE SHOW」で、このアルバムタイトルの元ネタ。1950年代のテキサスが舞台の青春映画。街に一軒しかない映画館がキーのひとつ。最初の二作品と同じく、どこか閉塞的な青春で若者達が惑う姿を描く。監督は知る人ぞ知るピーター・ボグダノヴィッチ。だけど、これも未見。ただ、調べてみるとこれがとんでもなく面白そう。主演が若きティモシー・ボトムズ、ジェフ・ブリッジズ、シビル・シェパード。おっさんのイメージしかなかったジェフが若い! シビルが初々しい! ティモシーがやせている!そして1984年に、30年後の姿を描く続編「ラスト・ショー2」なんてのも作られてたとか。アメリカの「俺たちの旅」みたいですね。まあ続編は駄目さ加減が見えてるけど。
 映画のキーワードは映画館(最後に閉館する)で、歌詞でもそれがキーワード。閉館する映画館を軸に、彼女との思い出にひたる。昔、彼女を捕まえておけなかった男が、強引に連れて行きたかったと呟き、今でも後悔してる。聴きようによってはかなり女々しい(笑)。曲はスローバラードで、冒頭のストリングスの音が実に気持ちいい。井上鑑アレンジらしさが漂ってる。歌詞はなんだけど、名曲です。曲調は違うけど、前回の「冒険王」と同系統の南佳孝らしいバラード。
 「そうだね ジョン・ウェインが死んだときから 強かった 男の時代の終わり」
 「赤い河 駅馬車 アラモ 古き良き時代さ 君のこと 何も言わず 抱きしめたかった」

 5曲目は「突然炎のごとく」。まあ見てなくても名を聞いたことのある人も多いでしょう、1962年のトリュフォーの名作がモチーフ。二人の男と、女の物語。これもTVで見たはずだけど、もう覚えてない。調べると、親友二人が一人の女にかきまわされて、奇妙な三角関係に。結局破滅へと至るが、そこらへんが歌詞に反映されてる気がする。曲はスローに始まり、どこか不安な曲調で進む。テンポはよいんだけど、南さんの気だるげな歌いっ振りが静かながら不安の残る恋人らのイメージ。歌詞も含め、実にいい歌です。冬の暖炉の揺らめく炎のように、美しくも固定されるものでなく、いつしか消えて灰が残る。
 「炎が燃えてる 激しく悲しく 命の火花を散らして」
 「燃え上がる炎は いつか灰になる」

 6曲目は「大人は判ってくれない」。アルバムで唯一、インストゥルメンタルで歌詞は無い。1960年のトリュフォーの処女作がモチーフ。私は未見。あらすじ見ると、結構酷い話って感じですが。映画音楽のような美しさのピアノ曲で、アルバムのちょうど前半と後半を分けるのにいい塩梅。もっともアナログLPでは、この曲名が見当たらない。

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 実はこのアルバムはCDを出した際にアナログより曲数が増えています(順番も少し変わってる)。当時のCDによれば、「※3曲はLPに未収録」とあります。アナログ盤の紹介全10曲でアナログ盤の曲と照らし合わせると、1から5曲目まではCDと同じ。この6曲目がなくて、あと11曲目の「華麗なるギャツビー」と13曲目「避暑地の出来事」の計3曲がありません。まあCD買って最初からこれしか聴いてない私には、関係ありませんが。

 長くなったので、ひとまずここで終了。後半は次回。

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