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『LAST PICTURE SHOW』 by 南佳孝 吉田保リマスタリングBSCD2 B面

 前回に引き続き、『LST PICTURE SHOW』の紹介です。

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 モチーフの映画とか色々調べていると長くなってしまいましたが、面白いので続ける。個人的にはそれほど思いいれのある映画は無くて(未見が多い)ただネットで知る程度のことばかりですが。このアルバムを聞いた当時はいつか観てやろうと思ってました。大人の映画だなあと。当事はまだDVDも無くて、レンタルビデオといえばビデオテープ。レンタル料もそれなりで、セルビデオといえば一万円超の時代、そりゃよほど好きでないと観ようとはしません。暗そうなものばかりだし。

 あと、名画座などで見るのはまたマイナーなやつばかりだったなあ。『地球に落ちてきた男』や『赤い影』『ゴシック』は良く覚えてる。あ、前の二つは最近BDで出ましたので、今なら観易いはず。もっともどれも話が分かり易いとは言わない。と言うか実にわかりにくく、映像表現に凝ってるけどエンタテインメントな映画ではない。三つとも。というか前の二作品はどちらもニコラス・ローグ監督だった。『ゴシック』はケン・ラッセル監督のやつです。『フランケンシュタイン』を生んだメアリ・シェリー、そのきっかけになったディオダディ館での一夜をモチーフにした映画。これはBDにまだなってない。前二つよりは好きなんだけど、ラッセルはやはりマイナーなのか。『白蛇伝説』とか笑えて結構好きなのにあれもBDにはなってないな。あと『マーラー』が最近BDになってたので、これは一度観てみたい。って、なんでケン・ラッセルの話になっているのだ。いえ、これらの作品が特異であるから覚えてるだけで、決してケン・ラッセルの熱烈なファンというわけではありません。

 リバイバル上映は有名な奴が多かったけど、なぜかこのアルバムあたりの物はあまりやってなかった記憶がある。アメリカン・ニューシネマは時代が合ってないので、あまり観てない気がする。『明日に向かって撃て!』とか『卒業』とか『タクシードライバー』くらいか、観たの。大学時代に。『俺たちに明日はない』と『フレンチコネクション』と『イージーライダー』もTVで観た(完全ではなかったかな)。お、『ダーティハリー』も入ってる。これは何度も観ましたね。主にTVでだけど。

 閑話休題。さて続きは以下に。

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 7曲目は「フラミンゴ・キッド」。1985年の米映画がモチーフ。未見。主演はマット・ディロンで、出世作です。TVで観たかな。細面で若かった。60年代アメリカの青春物で、恋や大人への憧れ、失望など一夏の経験ものらしいキーワードが並ぶ。クラブ・フラミンゴが舞台なので、そこで働くからのタイトル。歌詞はそう言われれば映画と被るかもしれないが、曲調はそうでもなかった気がする。スローでロマンチックに始まるが、メインに入ると途端にダンスぽくなる。これも凄く好きな歌。歌詞は、舞台を日本にして、ダウンタウンの少年がハイソな少女との一夏の恋、そして結局別れを納得するまで。
 「また逢えるって聞いたね 軽くうなずいたけど 二度と君に逢う日が 来ないのを知っていた」
 「夕日が海へと 落ちてくのを見たね いつか君に似ている 違う娘(こ)でも探すさ
  フラミンゴキッド フラミンゴキッド フラミンゴキッド」

 8曲目は「理由なき反攻」。1955年の、知らないものはいないであろう偉大な青春映画、ジェームズ・ディーンの代表作の一つがモチーフ。このアルバムの他の青春映画が制作時より前の古き良き時代を描いてるのに対し、この映画はほぼその当時の若者を描いている。『太陽の季節』みたいなもんか。ある意味、普通の青春映画なんだけど、当時から始まっていた大人と子らの断絶と理解がテーマであり、陳腐なストーリーになるところを、傷つきやすく何をしていいか分からない少年たち(というにはちょっと年上だが)の目が救った感じ。理解されないと泣きそうなジミーの目、最後の悲劇とその慟哭の演技は時間を超えますね。
 でも曲は割とノーマルなロックンロール。テンポはいいし、時代的にはらしいけど。歌詞は結構映画に沿ってるが、当時を舞台に歌ってるわけではなく、今の自分たち若者もジミーのころと同じことをし、同じ様に感じてるという歌。テンプレな歌詞だけど、そこがいい歌。若さってやつですね。他の人が歌うとまた違うんだろうけど、南さんの歌い方が気持ちいい。
 「大人がまた嘘をつく 俺たちまた傷ついて すねてる目で 逆らうだけさ」
 「ジミー お前の瞳の陰に ジミー そいつが痛いほど分かる」
 「引き裂くなら 引き裂けよ 汚れた手の大人には 拳を握り 戦うだけさ」

 9曲目は「水の中のナイフ」。1965年のロマン・ポランスキー監督の第一作目の映画。私は未見。富裕層の夫婦が舟遊びに行く際に、若いヒッチハイカーを拾い、そのままヨットに誘う。若さの象徴が、ハイカーの愛用のナイフであるらしい。
 この曲もスローな始まりですが、変わらず最後までスローバラード。まさに水にたゆたうようなリズムと、水の影などを書く歌詞が気持ちいい。歌詞は映画のように三角関係などでなく、二人の恋人の話。
 「透明な 深い青 ゆるやかなうねり 白い砂の 幾何学模様 ゆれ動く 船の影」
 「沈んでゆくよ 碧に光る海の底へ 心はまるで 水の中のナイフ きらめくよ」

 10曲目は「シュガーランド・エキスプレス」。これは全く聞いたことなかったのですが、1973年のスピルバーグの初劇場作品『続・激突! カージャック』の原題だそうで。私はTVスペシャルドラマとして撮られた『激突!』はじっくり観たんですが、これはまともに観てない。TVで少し観た程度。何故この映画を選んだのか不明ですが、まあこの邦題で歌を作れと言われても困るわな。曲はこれもオーソドックスなロックンロール、歌詞は若いギャングの話。映画は養子に出される息子を取り戻すため脱獄し、警官を人質にパトカーでシュガーランド(地名)へ向かう若い犯罪者夫婦の話で、撃たれて死ぬとこまでわりと忠実。この旦那視点の歌詞ですね。

 11曲目は「華麗なるギャツビー」。これも名前だけは知らない人はいないんじゃないかという、映画がモチーフ。F・スコット・フィッツジェラルドの小説「グレート ギャツビー」が原作で、近年ディカプリオ主演で再映画化もされました。実は原作当事の20年代から映画化されていて(最初の映画は、今では予告編だけで本編が残っていないらしい)、映像化は今回で5回目だそうな。こちらの元ネタは多分1974年版のロバート・レッドフォード主演の映画。ハンサムで実にいいんだけど、過去の設定を見るに実はディカプリオのほうが似合ってる気がする。1920年代、謎の富豪ギャツビーが、毎晩豪勢なパーティーを催している。隣人のニックは仲よくなるが、彼に謎を感じる。湖を挟んで対岸にある屋敷の夫人デイジーとギャツビーの関係、ニックが見る隣人たち。フィッツジェラルドの体験が多分に入っていると言われる話ですが、アメリカンドリームの話でもあり、アメリカの悲劇に繋がる話でもあるかな。
 これもスローな曲ですが、ストリングスの美しい出だし、サビからのピアノが印象的で少しジャジーな香りがするいい曲。名曲だと思う。歌詞は原作のネタバレっぽいですが、まあ貧しいころに好きだった彼女がいたけど、今は裕福になり、色々上げることが出来る。彼女が今は他の誰かと暮らしていても、自分の愛は変わらない。曲の余韻にせつなさを感じる。
 「銀の指輪も 買ってやれない 貧しいころが 嘘のようさ
  風にそよぐシルクのシャツ あとは君を手に入れるだけ レイディ」
 「窓に動く あのシルエット 遠く見てるだけさ あのシルエット」

 12曲目は「スケアクロウ」。モチーフは1973年の米映画。ジーン・ハックマンとアル・パチーノが主演のロード・ムービー。アメリカンニューシネマの一つだそうですが、未見。ふとしたことで知り合った二人の男。ムショ帰りのマックス(ハックマン)と妻子を五年間ほったらかしにして船員をしていたライオン(パチーノ)は、意気投合し旅の道連れに。ぼろ儲けな洗車場をしようと金を取りにいこうとするマックスは、仲良くなったライオンの用事が済んだら一緒に仕事しようという。短気なマックスに巻き込まれるライオンは、しかし妻の下に近づくにつれ意気消沈していく。彼らの旅の先に待つものは。
 歌はわりとシンプルなリズムで進み、嫌味がない。歌詞はなるほどモチーフ同様男の友情が描かれている。まあそれほど印象的ではないけど、悪くも無い歌。そこが魅力か。間奏は結構好き。
 「はんぱにお金持ってるより 無一文がいいね
  お前って本当にいいやつさ 目を見るだけでわかる」

 13曲目は「避暑地の出来事」。モチーフは1959年の米の青春映画ですが、いまや禁じられた恋のミームとなった邦題は、映画を知らずともあちこちで聞かれます。しかし公開当事は青春映画としてはかなり売れたようです(日本ではどうかしらないが)。主演が当事の若手スター、トロイ・ドナヒューで、彼の代表作とも言われてます。お相手も当事の若手スターのサンドラ・ディー。どちらも当時十代のアイドルだったそうです。
 とある海辺の避暑地にやってきた一組の裕福な家族。その娘と宿屋の息子が恋に落ちる。しかし今や富豪となったその父親と宿屋の妻はかつて親に引き裂かれた恋人同士だった。今でも想いあっていることを知った二人と、子ども達の恋は……。とまあ、二組の禁断の恋が軸になってるお話。ぶっちゃけると、宿屋の夫と富豪の妻が貧乏くじ引くんですけど、彼らが悪いわけじゃないのになあと同情してしまう。

 話は変わりますが、私が好きなミュージカル映画『グリース』は、この作品がモチーフのひとつ。冒頭、ひと夏の恋。海辺の恋人達はいつか再会することを夢見て分かれます。少年ダニー(ジョン・トラボルタ)は地元高校にもどれば、リーゼントに革ジャンでキメたチョイワルなグループのリーダー。そこに転校してきた少女サンディ(オリビア・ニュートン・ジョン)は、なんと避暑地で出会った彼女でした。ロマンチックな恋の続きを夢見るサンディですが、硬派を気取るダニーは、仲間の手前、素直になれません。ライバルグループやダンスパーティ、高校最後の年のイベントを経て、果たして二人の恋の行方は……。
 冒頭がこの映画のパロディだというのはすぐわかりますが、も一つ決定的なのはサンディが唄うナンバー「私はサンドラ・ディー」、つまり『避暑地の出来事』の主演女優の名前をそっくりいただいてます。サンディの本名はサンドラ・オルセンらしいので、つまりサンドラ・ディーをミームに使ってるのでしょうね。物語の舞台はこの映画と同じ50年代。スキャンダラスな部分をそっくり外し、50年代の一ブームである避暑地の恋をツッパリグループの青春と高校生活に放り込んだ、ネアカな青春ものが『グリース』でした。物語自体はたわいも無い恋のやりとりですし、格調高い歌というわけでもありませんが、この実に楽しい歌とダンスは未だに忘れられません。つか姉が買ったサントラのカセットテープ、終いには殆ど私が聞いてたので、そのせいだろうけど(笑)

 話を戻して、『避暑地の出来事』は当事としては結構スキャンダラスな魅力のあるお話だったんでしょうが、今ではそれほどでもないシチュエーションですよね。だがしかし、永遠にその名を刻むのは内容よりも俳優よりも、実は曲。ムーディーな映画音楽特集では、『慕情』などと同様に必ず出てくるほど有名なテーマ曲(「夏の日の恋」という邦題が付けられてるほど)で知られています。サントラよりリンク先のパーシー・フェイス楽団のカバーが売れて有名になったそうですけど。子どものころによくFMで流れてましたが、アレも多分パーシーのだったんだろうな。
 作曲はマックス・スタイナー。彼はアカデミー賞に26回ノミネートされ、オスカーを三つ取ったハリウッド映画音楽の大家だそうで、『キングコング』や『カサブランカ』や『風と共に去りぬ』の作曲家でもあります(アズタイムゴーズバイは別の人の曲)。もっともアカデミー賞をもらったのは、このどれでもありませんが。しかしタラのテーマでアカデミー逃したとは信じられん……と思って調べてみたら、1939年の作曲賞は『オズの魔法使』でした。それはそれで納得(ちなみにどちらも監督はヴィクター・フレミング)。さて、そんなマックスの『避暑地の出来事』のサントラも一部ありました。50年代のムーディな調べに聞きほれるが良い。……あり? メインテーマが違う? 「夏の日の恋」、三曲目の"Bright Dreams / The Garden"というやつですね。他では当然のように"Theme from a summer place"なんですが、これパーシー・フェイスらがカバーした際につけた名前なんだろうなぁ。確かに本来のメインタイトル、大仰でいかにもタイトルがかぶさりそうなんですが、こっちがメロディアスで聞いてて気持ちいいものなあ。

 話がそれましたが、そんな有名な曲とは、この南さんの歌はまったく違います。歌詞はむしろミームとなった禁じられた恋、秘密の恋のほうに寄っていて、思い出すのは年上の女性とのひと夏の恋。恋人がいることを隠されてて、結局失恋するという話。曲調もわりと60年代っぽいムーディな曲ではありますが、こういうオーケストラっぽさはありません。イージーリスニングっぽいのは似てるけど。でも古きよき映画のコンセプトアルバムの締めを飾る、いい歌です。
 「眠れぬ夜 ふとTVつければ 昔見た映画が 過去へと連れ去る」
 「避暑地の出来事 手をつないで 歩く波止場 二つ年上の 綺麗な人さ 星が揺れていたね」
 「ぼくの他に 恋人がいること 何故隠していたのさ 哀しかったよ」
 「若い日々の トロイ・ドナヒューたち 永遠の青さが 哀しかったよ 哀しかったよ」

 長くなりましたが、これで終り。

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 復活したステレオで聴くと、これまたいいです。あれですね、40年近く前のスピーカーとはいえ、高さ66cmくらいの大きさで、ちゃんとしたアンプ通したら、ニアフィールドのデスクトップスピーカーとは音の厚みというか色合いが比べ物になりません(といってもプレーヤーもアンプも違うわけだから、正確でも公平でもない)。
 もちろん適度に音量を上げて聴けば、ですが。古いせいか、音量があまりに小さいと右スピーカーがボソボソいいますし。しかしこれは一戸建ての特権かな。アパートだととてもじゃないが普通に聴ける大きさでも無理がある。この音量だと、横はかなり聞こえるはず。階下ではこれでも静かな夜だと歌詞が聞き取れるか取れないかのレベルなので、夜はこれ以上大きくするのも憚られます。結局はヘッドフォンになるかなー。

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