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『Daydream』 by 南佳孝 吉田保リマスタリングBSCD2

 前回Sony Music Shopで購入したCDから。

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 1枚目は南佳孝の8thアルバム『Daydream』です。当事はアナログLPレコードの末期でLPとCDが同時発売されたりしてましたが、これは特に見た覚えがない。アナログ優先だったのかも。発売日は1983年7月21日とあります。ジャケットの絵は、あのフランク・ロイド・ライトが設計したニューヨークにあるソロモン・R・グッゲンハイム美術館をモチーフにしてます。上の公式サイトの南さんのコメントによれば、カンバスの上に石膏を乗せて立体感を出したりして四点ほど作ったそうで、結構金がかかったそうな。

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 驚いたのはケース持ったときの重さ。他の二枚より確実にほんの少し重い。大きさは違わないし、中はCD一枚なのにはて、と思ったら、ライナーノーツが違いました。なんとLPのライナーノーツ・サイズ(もしくは少し小さめ)の当事のライナーを再現し、その大きさの紙を折りたたんで入れてました。CDのブックレット入れるところのツメの隙間も大きい(笑)。紙って結構重いんですね。写真は二つ折り(つまりLPに入ってる時)の状態の表紙側。折り目から分かるように、これをCDに入るサイズに折り畳んでます。

 アルバムとしては、なんだろ、良く言えば後のものよりもっと透明感がある。悪く言えば薄い。夏っぽい歌もあるけど、大瀧詠一のナイアガラとはまた違う。陽差し暑く、入道雲は高く、青く晴れた空というより、青は少し薄く遠く高い空、人気のない海、少し涼しくなった残暑。まあ「サマー・ミュージアム」の歌詞なんかもろに夏の終りだし、スローテンポの歌も多いせいかな。

 ブックレット表裏。オレンジのほうが裏。
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 このアルバムは、全曲の作曲は南佳孝、編曲は井上鑑です。作詩は以下の通り。

1. ビート 作詩:小林 和子 3:54
2. 素足の女 作詩:来生 えつ子 4:33
3. 曠野へ 作詩:松本 隆 5:06
4. 昼下がりのテーブル 作詩:松本 隆 3:05
5. サマー・ミュージアム 作詩:南 佳孝 3:38
6. シルバー・シューズ 作詩:田口 俊 3:43
7. ナイト・ムーブ 作詩:来生 えつ子 4:45
8. めまい 作詩:来生 えつ子 4:11
9. 水の眠り 作詩:来生 えつ子 4:18
10.デイドリーム・アイランド 作詩:南 佳孝 / 西 周 3:38

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 写真はライナーの内側。歌詞などが書かれてます。「めまい」の歌詞の左側の折り目が中心で、右手側が切れてますが、そちらには南さんの白黒写真が入ってます。

 曲のイメージ、感想。

 1番は結構アップテンポなポップな曲ですが、これも佳孝節と言えるメロディ。この後のアルバムでもよく使われるメロディラインですが、掴みはいい。今となっては少し古いタイプの曲ですが、これこそ南佳孝。

 2番は、曲調はあまり好みではない。似たメロディの曲では好みのものもあるけど。歌詞は秀逸。曲とからんで、夏の話だろうに、なぜか寂しげな印象。最後まで女としか呼ばず、一歩引いたどこか醒めた目で見る態度を崩さない男。

 3番は、もう出だしから井上鑑アレンジが効いてる。静かに進むシンプルなリズムに乗る松本隆の歌詞がまた素晴らしい。独り曠野に住む男のロマンチストぷりを、派手な強がりも感じさせず読ませる。ストーリーラインもシンプルで、失恋して(どちらが原因でかは不明。聴く人によるだろう)心証的な曠野に住む男に届いた元カノからの手紙。それを捨てて独り生きようとする男ってだけ。これがただの強がりなのか、本当に達観してるのか。同じ様に恋破れた歌といえば、例えばオフコースの「眠れぬ夜」などはかなり引きずってて未練もあってなおかつそれを受け入れるわけにはいかない男のロマンチシズムなどがあるわけですが、それとは全く違うダンディさがある気がする。

 4番は名曲。まさに佳孝節なスローバラード。この曲も、実に歌詞を活かしているというか、読ませる曲。作詩はやはり松本隆で、長いつきあいの二人に流れる時間、やさしさが溢れているように思える。ただ3番ほどかっちりしたストーリーではないので、果して愛が終るような二人なのか、これからも深く長く愛を育んでいく二人なのかは分からない。これも聴く人次第なのかな。

 5番も個人的には名曲。上と同様にスローだけど、ちょっと明るいというか、透明感というか、凄く空が遠い風景が思い浮かぶ。歌詞からすると夏の終り、すでに人もいなくなり涼しげな浜辺のころを追想してる。男か女かはともかく、主人公はその時期を連想する思い、寂しさをいつも持っていて、何度かの夏の終りの思い出にふける。

 6番はアップテンポなロックンロールですが、シンプルなバックと歌い方で、あまり激しい感じには聞こえない。これが浜田省吾なら、ものすごいインパクトの歌い方しそうだけど。でもテンポはいいし、歌い終わりがやはり少し寂しげで悪くない歌。商売女ではなさそうだけど、フラッパーな女の誘いに乗った男。愛されてるなんて幻想は流石に抱かないが、夢を捨てきれず、ならば一夜の愉しみくらい溺れさせてくれ、というストーリーでしょうか。どうしようもなくロクでもない夜の話っぽいんだけど、何故かそこまで暗く感じない。やっぱり曲かな。

 7番はなんか来生えつこさんの歌詞が全てっぽい。曲調までもが来生さんの歌に聞こえる。ただサビでいきなり佳孝節に戻るけど(笑)。来生さんの大人のカップルの歌としか。

 8番は、正直このアルバムで一番好みでない歌。特に言うことも無し。

 9番は少しうきうきしそうなテンポで始まる。中南米っぽいリズムだが、楽器やアレンジが違うせいかそこまで濃くはない。サビのあたりはやはり南佳孝の曲だし。しかし気だるげでいつつも明るめな曲と違い、歌詞はまどろむ男と女のすれ違いがありそうで、ちょっと意味深。何か不安な女に比べ、男は気にせず眠ろうとする……のかな。

 10番は鉄琴?の音から始まるけど、なんだか純日本のメロディが混じってるようで、奇妙な出だし。しかし他の楽器が混じりメインの曲が始まると、やはり井上鑑アレンジ。歌詞は、海を見つめる長い髪の少女を見て、ふと子供の頃を思い出す男の話。ただ思い出すだけでなく、白昼夢と呼べるほどはっきりした思い出。悲しみが人それぞれ違うように、喜びも人それぞれという歌詞で、何かあったのだろうとは分かるけど、あくまで白昼夢を覚えたという状況を歌うだけ。目を閉じて白昼夢に入っていくところが何かの導入部のようですが、結局はアルバムの最後で、そのままフェードアウトするように消えていく……終ってないように見えて、実は聞き終わった現実が白昼夢というメタ構造なんだろか。このアルバム流して聞いていると、知らない内に終ったかのような錯覚を覚えるエピローグです。カセットやCD、データの今ならえんえんとループさせてちょうどいい終りなのかも。はっ、そうすると1番に戻るわけだから、このアルバム自体が白昼夢なわけで、タイトルにかかるわけですね。上手い(ホントか?)。

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 ということでお薦めは3、4、5、10ですが、それだけだと多分静かすぎるので、1と2と6と9を混ぜるといいかも。って、7と8抜いてるだけか。どうかな、アルバム全体としては『LAST PICTURE SHOW』ほど完成度の高い感じはしないけれど。なんとも夏の終り、涼しくなりはじめた陽差しが少し入る部屋の、白い壁に掛かった小さな絵画(ジャケット絵)、というイメージかな。明るくて詳細を見るより壁にかかったソレを目の端に入れるくらいが適当な、ゆったりした空気感。

 次回は『冒険王』。

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