« E17 LED電球と、横向きアダプターソケット RITEX DS17-10 | トップページ | ロジテック外付けHDD『LHD-EN20U3WNS』発表 »

『ザ・チャイルド 30周年特別版』DVD

 二月末にタイトルのDVDを購入しました。
 1976年のスペイン製のホラー映画『ザ・チャイルド』です。噂に聞いたことはありましたが、これまで本編を見たことはありませんでした。下はパッケージ。30周年特別版とのことで、DVDと厚めのブックレットがセットになって紙スリーブに入ってます。

Pakege

 粗筋。スペインの海岸沿いの町にきた英国人観光客の夫婦。妻イブリンは三人目を妊娠していて、夫トムが12年前に来たという沖合の島に二人してやってきたのだった(子供二人は家に置いてきた模様)。町はお祭りで集まった人々でいっぱいだったが、その裏では惨殺死体が海岸に流れ着く事件が起きていた。そうとも知らずにボートを借りた二人は、島へ向かう。祭りでうるさい町を離れ、静かな島に行くことを楽しみにする二人。船着場には子供たちが数人いたが、なぜか他に人の姿はない。誰もいない通り。誰もいない店先。誰もいないホテルについた彼らの前で、少女がおじいさんをめった打ちにする!次第に明らかになる島の謎。ある日突然島の子供たちが、大人を遊びのように惨殺し始めたのだ。トムとイブリンは生存者と脱出しようとするが……。

 以下はDVD本体パッケージの表紙。

Pakepict9461_


 特にホラーが好きというわけでも無い私がこのDVDを買ったのは、カルトホラーで今後BDが出そうにないのと、二月いっぱいまでの限定販売(販売会社のスティングレイの日本の版権が切れる)なのと、オマケのためです。日本での公開当時(1977年)、雑誌月刊少年チャンピオンでコミカライズされたそうで、その漫画家があの桜田吾作だったのです。その漫画が、DVDに付いてくるというのだから、これは買うしかなかろうと。早速読もうかと思ったら、忠実に最後までコミカライズしているということで、本編見るまでは読まない方がよいと書かれてます。DVDじっくり見るのが遅くなったので、今日ようやく見ることができました。

 この商品、先に書いたように紙スリーブにDVDと特典のブックレットが入ってます。ブックレットの内容は、漫画45Pと劇画ロードショーについてのコラム、映画に関しての解説など。この30周年特別版の製作についての経緯も書かれていて、これがまた実に大変な経緯でした。下はブックレット表紙(左を表紙とすると右とじ)。左は収録されてる漫画の表紙でもあり、こちらから開くと漫画、右の映画スチールが表紙のほうを開くと映画に関しての解説他が読めます。

B


 DVDには本編以外に映像特典が入ってます。監督、撮影監督へのインタビューと予告編、米版のOPとED、ギャラリー等があります。インタビューは上の製作経緯でわかりましたが、米版リマスターDVDがダークスカイという会社で作られたときに、一緒に撮られたようです。米版のOP・EDもその関係で入ってたのだと思いますが、マスターはなかったようでビデオ映像のかなり画質の悪いものでした。実質違いがあるわけではなく(カットされてるだけ)資料的価値しかないかな。
 本編映像はいろいろあって米版リマスターを基にすることになりましたが、日本でのリマスターから傷消しのデータをとったりした混合版といっていいものだそうです。それに日本でTV放映されたときの日本語音声を探し出し追加、TVでカットされ日本語音声の無いところは英語字幕だけになります。なおちょっと長めの冒頭シーンもカットされてましたが、さすがに最初から字幕というのもなんだからとここは追加で日本語ナレーションを入れたそうです。試しに日本語と日本語字幕で見ましたけど、一部訳が完全に違ってる以外は大体同じようでした。

 いやー、なかなか怖かったです。ショッキングなものでもスプラッターでもなく、シンプルなホラーで、いわばヒッチコックの『鳥』の人間版。撮影監督もはっきり『鳥』と『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』が元ネタだと言ってましたっけ(いやパクりと言ってたかもしれないが)。何が原因かもわからず、何のてらいもなく、笑いながら大人を殺していく子供たち。しかし大人たちはなすすべもなく、逃げ回り殺される。なぜなら子供たちを殺せないから。スペイン語の原題は『誰が子供たちを殺せるか?』。


 以下少しネタバレ。

 恐るべき子供たちといえば侵略SF映画『光る眼』とか思い出しますね。宇宙人の子たちで不気味に光る眼の印象はすごかったですが、こちらの映画は特になんのエフェクトもありません(米の再上映時のポスターの絵にはなぜか白目の子供がいますが、これは米配給会社が『光る眼』の印象を勝手に付け加えたからだとか)。素のままの少年少女が逆に不気味。まあ笑わない演技もそうだし、普通に笑いつつも大人を襲ったりしてる演技?も怖い。てかよく出てくる男の子と女の子が異様に怖い。他にも数の暴力というか、主人公夫婦を大勢で待ち伏せてるところとか、崖の上を見上げるカットで崖の向こうからわらわらと子供が出てくるところとかも不気味。よくまあそのままの映像と音楽だけでこんなに怖くできるなと。

 たとえば大人の死体を切り刻んでるシーンなんかはショッキングではあるけど、それ以外は直接の殺人シーンは最後まで出てきません。最初に殺される老人も路地の陰でめった打ちされてるだけだし(生きてる姿は手だけしか見えない)、他の犠牲者もそう。さすがに子役が殺人するところは倫理的に撮れなかったのでしょう。すべてカットでごまかしてますが、きり変わりが短いので違和感が生まれる余裕もありません。そんな簡単なモンタージュなのに滑稽ということもなく、怖い。子供たちは人でなく何かモノをたたいたりただ立ってるだけなんでしょうが、当然本気で笑ってるからです。ぶすっとした子供も単に笑ってないだけで普通の表情なのに、その前後のシーンのおかげで不気味さが生まれてます。

 今だと子供が死体を弄ぶというシーンだけでもヤバいし、大人が子供に乱暴するシーンはもっとヤバいので、こんなシナリオでは撮れないでしょうね(リメイクの話も出たそうですが、もう五年以上前のことなのでぽしゃったかな)。クライマックスでは主人公が大勢の子供相手に乱闘し、数人を結局殺害します。スプラッタムービーや普通の殺人シーンのようなリアルなものではありませんが、これは今どきの人権主義者らが怒りそうなシナリオです。公開当時もフィンランドでは公開禁止になったそうですし、米他では規制もかかったとか(日本ではノーカットだったそうですが)。映像的にはたいしたことないと思うのは、日本人だからでしょうね。つくりものっぽいからいいだろうと思いそうですが、英米ではやはり子供を殺すというのはちゃちくてもタブーです。

 『鳥』と同じく、ある日突然大人を襲い始めた子供たちの謎は基本的に明かされません。ただ、単に狂ったというわけでもなく、何かの力が働いているのは確かです。
 中盤、主人公らが船着場のある村を逃げ出し、入り江の小さな家にたどりつくのですが、そこはまだ普通で大人も子供たちも変わりありません。ところがその家で一休みしていたところ、最初の村にいた子供二人がやってきます。そしてその家の子供たちの前で無言で見つめると、その家の子供たちも次第に表情をなくします。ただの効果音かもしれませんが、超音波のような音が高まるのに合わせて。つまりこの狂気は伝染するのです。
 ラスト、島を出て本土に向かう船を用意する男の子に、残る女の子が訪ねます。「本土でもこの遊び流行るかしら」「もちろんさ。子供は世界中にいるから」。ここから伝染病のごとく伝わる終末への始まりが、この映画のラストシーンです。大人たちのいない湾で無邪気に水遊びをする子供たち。これがゾンビものと違うのは、いずれ彼らも大人になるということでしょうか。果たしてそのとき、大人になった子供たちはどうするのか、まだ小さい子供たちはどうするのか。
 ちなみに原作者の書いた小説版(監督の脚本が先にできたとか)では謎の黄色い粉が夜振ってきて、それからおかしくなったのだそうですが、監督はそういう理由のあるものにはしたくなかったから特に書かなかったのだとか。ただこれは大人たちに対する子供たちの復讐かもしれないとは暗示したと。それは冒頭に挿入した映像からわかります。
 冒頭えんえんとニュース映像とナレーションが流れるのですが(なんと約8分)、それは世界の戦争とそこで被害を受けた子供たちの映像。第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争。アウシュヴィッツやサイゴン陥落時の有名な映像もあれば朝鮮戦争で孤児となった子供たちの映像などもありました。これが流れてから本編の始まり、海水浴客でいっぱいのスペインの浜辺に切り替わります。ただ監督によれば、これは失敗だったと。ラストに持ってきた方が、子供たちの復讐というテーマを出しやすかったかもと言ってました。実際に冒頭から見ると、このニュース映像の意味は不鮮明で、ただ傷を負うリアルの子供たちの姿にホラーとは別の意味で怖さを感じるだけでした。ただ最後にこれが来ても余計に訳わからん感じもするので、個人的には冒頭のままでいいかな。


 本編の映像は、地中海らしい明るい日差しと白いしっくいの家々、青い海など陽の中に、無人の村と子供だけという違和感がうまく入り込んでいて、実に怖いです。日本と違う地中海の昼間の日光のせいかもしれませんが。
 からっとした雰囲気はらしいと思いましたが、映像特典で入ってる撮影監督の言葉によれば、ロケ地はいくつかあって島の中はいくつもの町の集合体だそうです。ロケ地違いで日の照射の雰囲気も変わるため、写る光を同じようにするのに苦労したとか。比較映像だと確かに少し違いますが、プロの仕事ですね。
 音楽もシンプルですが、なかなか雰囲気があります。冒頭からおそらく子供が歌う鼻唄が流れるのですが、これがいかにもホラーっぽいです。ダリオ・アルジェント作品とも通じるものがあるので、あそこらへんの定番かも。作曲家さんはマカロニウェスタンなどでも作曲してたそうですが、42歳の若さで自殺したそうです。

 主人公の夫トムと妻イブリンは、それぞれ監督が英国へ行って見つけてきたそうですが、監督によればトム役のルイス・フィアンダーはつまらなかったとか(あんたが呼んだんじゃないのか)。彼はオーストラリア出身ですが当時は英国で活躍していて、これが映画初主演。イブリン役のブルネラ・ランサム(英国出身)は逆にすごくよかったと言ってます。確かに演技としてはイブリンのほうが大変そうですし、トムは中盤以降はとにかく必死だったり絶望の顔するくらいで変化は乏しかったかな。でも子供の残虐な行為をはっきり見るのはトムだけだし、子供の殺害を決意したところの、大切なものをなくしどこか生気の抜けた、少し悲しみもある表情は悪くなかったと思います。なおブルネラ・ランサムは2003年に亡くなられてます。

 スティングレイ社以前にもDVDにはなってたそうですが、これだけ力の入った完全版ともいえるDVDを出してくれたスティングレイ社には感謝。ただ日本での権利が切れたため、今後発売は未定というのは残念ですね。スティングレイ社の通販専用であとは首都の数店での店頭販売だけだったそうですが、今後はプレミアつくんだろうなぁ。ブックレットはまだしも、DVDだけでもまた出せばそこそこ売れると思いますけど。まあホラーとしては地味、シナリオもシンプルなので販売権利買ってまで売るのは難しいかなあ。

|

« E17 LED電球と、横向きアダプターソケット RITEX DS17-10 | トップページ | ロジテック外付けHDD『LHD-EN20U3WNS』発表 »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 『ザ・チャイルド 30周年特別版』DVD:

« E17 LED電球と、横向きアダプターソケット RITEX DS17-10 | トップページ | ロジテック外付けHDD『LHD-EN20U3WNS』発表 »