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DVD『怪人カリガリ博士』

 20世紀フォックスのリクエスト・ライブラリーというシリーズより発売されたDVD『怪人カリガリ博士』を購入しました。先のBD『処刑ライダー』と共に。到着したのは5月26日(笑)。本編106分で(映像は特にノイジーではありません)、特に特典は無し。チャプターも無し(まあネタバレに一直線ができないからいいか)。音声は英語2chだけ(音質はそれほど悪くない)、字幕も日本語だけ。映像はモノクロ。シネマスコープなので、横長です。

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 原題は“The Cabinet of Caligari”。1962年の米映画。タイトルを見れば分かるように、あのドイツの映画『カリガリ博士』のリメイクというか翻案です(タイトルではオリジナルとの違いはDr.が付くか付かないか)。原作のアイデアをもとに全く違うお話として作られています。シナリオはあのロバート・ブロック。あの『サイコ』の原作者ですね。TV番組や映画のシナリオもいくらか手がけています。撮影はジョン・ラッセル。彼はヒッチコックの『サイコ(1960)』の撮影もしました。監督/製作はロジャー・ケイ。彼に関しては他に情報がなく、映画もこれっきりのようです。
 パッケージの裏にはこう書いてあります。
「『サイコ』で知られるSF・ミステリー作家ロバート・ブロックの脚本をテレビ映画出身のロジャー・ケイが演出し、同じく『サイコ』のジョン・ラッセルがモノクロ・シネマスコープで撮影したゴシック・スリラー。公開当時「すさまじい最後の13分間は入退場お断り」とされた。主演は『メリー・ポピンズ』のグリニス・ジョンズと『ロボコップ』のダン・オハーリヒー。『エデンの東』のリチャード・ダヴァロス、『皆殺し無頼』のローレンス・ドブキンらが脇を固めている。」

 そんなわけで、かなりカルト色の強い、というかどマイナーな映画です。私もamazonで発売予定を見かけるまで、その存在すら全く知りませんでした。

 金髪の若い女性が乗るスポーツカーが軽快な音楽とともに田舎路を走る。突然のパンクに車を止めた女性は、降りて路を歩き始める。やがて日が暮れたころ、ある屋敷に辿り着き、助けを求める。紳士であるがどこか不気味なカリガリという男が迎え入れ、泊まるように勧める。彼女、ジェーンは疲れ果て客室で眠ってしまう。次の日発とうとするが、カリガリに見せられたカードにショックを受け、さらには気を失う。目覚めると既に夜で、屋敷には何人かの客や使用人がいた。彼らに助けを求めるが、奇妙な対応ではぐらかされてしまう。庭では青年マークと出会う。お風呂に入るジェーンは、天井に開いたすりガラス越しにカリガリの影を見る。また優しく協力的な紳士ポールはカリガリがジェーンの敵ならば対決するようにと言う。ジェーンは入り口のドアの内側に回転ドアのある奇妙な書斎でカリガリと対峙するが、何度も彼に言い負かされ、客室に逃げ帰る。やがて客のひとりが責められるところを見たり、逃げ出そうとして番犬に襲われそうになったりと恐ろしい目にあい、助けを求めた青年マークにも会えなくなる。精神的に追い詰められていくジェーン。何度目かのカリガリとの対決で、ついにジェーンは彼の正体を知り、ショックとともに部屋を飛び出すが……。

 オリジナルの『カリガリ博士』とこの時代、1960年代前後の不条理ものやスリラー物を知っていると最初からネタバレじゃないかと思うくらいに「らしい」セリフや演出のオンパレードで、そこそこ映画や小説を読んでいるとオチはほぼ読めます。そういう目で見ると、正直歴史に残る傑作とかとは言えません。佳作……かなぁ。わけの分からない展開とセリフ、客の様子などは、『去年マリエンバートで』も思い出します(あそこまで極端ではありませんが)。時折出てくる演出もいかにも古いスリラー映画で、ヒッチコックぽいですね。
 ハリウッド・スリラーらしい内容とWikipediaにはありましたが、そういうにはちょっと中盤がダレる展開かも。あとで思えばわかりやすい謎かけのようなカリガリとの会話がキモですが、そもそもがアレな主人公なのでわかりやすい会話劇でもないし(あとでオチを知るとなんだと思うわけですが、それまで覚えてないかも)、大まかに言ってオチ以前でスリラーらしい脅しのシーンは三つか四つくらい。ジェーンを追い込む事件としては弱いんですよね。最初のシーンから屋敷に入るまでは『サイコ』と似たような流れで、女性が操る車が軽快な音楽とともに走るところは逆オマージュなんだろうか。あれと違い、こちらのジェーンは主人公なので最後まで出てきますけど。

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 そして売り文句にもあった最後の13分間は、オリジナルへのオマージュとも言える奇妙奇天烈な美術が出てきます。この写真はディスク面ですが、パッケージ表とも同様のこの背景がそれですね。大きなショックを受けて混乱するジェーンの心象風景なのですが、ある意味上手い展開なんだけど今となってはよくある演出とも言えます(当時としてもそうかな)。どんでん返しといえば、以前購入したDVD『夢の中の恐怖(原題“Dead of Night”)』も似たようなパターンなのですが、あれの最後の混乱シーンは時代からすると秀逸でした。見比べてみても、こちらは美術の力を借りてるけどあちらはどちらかといえば演出と編集でこなしていて40年代とは思えないし、不気味さでいえばあちらのほうがおもしろい。ただオチそのものがこちらはショッキングながら平穏なエンディングへ向かい、あちらはまさに悪夢、デッドエンドの不気味な前兆という違いがあるので、当然かもしれません。納まるものなら安堵するけど、これから始まるとなれば不気味なのは当たり前。映画としてもこちらはお薦めしにくいんですが(この手の不条理会話劇っぽい映画は嫌いな人には本当に退屈)、あちらならオムニバスだし、古い映画が嫌いでなければそれなりに楽しめるのでは。

 ともあれ、オチはもう一捻りあるので、ネタは上がってると思っていても伏線に気づかなければ一応「あっ」といわせるオチにはなってます。似たものを言うなれば……『マタンゴ』のオチみたいなもんかなぁ。いや別に手遅れだったとかではありませんが。二重のオチといってもいいかなと。

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