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『空色動画』、3巻で完結。少しネタバレ。

 前にも紹介した、月刊「少年シリウス」で連載していた片山ユキヲの漫画『空色動画』の3巻が出ました。

 おおっ、ようやく3巻かぁと手に取り、裏表紙見るとなんと最終巻。知らない間に連載終了していて、愕然。収録されているのは13話から18話(最終話)なんですが、連載時に最後に見たのが13話だから、それから五ヶ月後には終了してたんですねー(ちょい前の話か)。うーむ、もったいないなぁと思いつつ、ある程度きりのいいところで終わったのは悪いことでもないかなー。表紙も1巻から3巻でちょうど三人の主役がそれぞれ描かれてるし、なによりすばらしい最終回でしたし。

 なんというか、影のない(まったくないわけではないが、なんというか悪意のない)友情物語で、ある意味ご都合主義的なネアカなお話ですが、陽のあたる暖かな山道を友人と歩くような楽しさがよく描けていて、純粋なアニメーションの魅力を漫画の枠内にきっちり溶け込ませてるその表現など、他に類を見ない素晴らしい作品です。知らない人にも、いやはっきりいうと絵柄が好みでない人にも一度は読んでもらいたいですね。

 『空色動画』の主役は三人。行動力があり天然ながら人の内面をとらえるのが上手いジョン(帰国子女で無論女子高生)、パンクロッカーのノンタ(バンドではベーシスト)、内気でこもりがちだけど絵を描くのが大好きなヤスキチ(女の子ね)の三人娘。それに何人かのクラスメイトたちがいっしょにアニメを作ります。詳しいキャラクター紹介や1巻のあらすじは、以前の記事を参照にしてください。
 2巻では本格的にアニメを作って文化祭で上映することにした仲間たち。初めて友達と好きなことができる喜びにひたるヤスキチ。バンドとのかけもちで悩むノンタとジョンがささいなことから行き違ったり、紆余曲折がありつつも友情を深める三人。彼らはついに文化祭用のアニメを完成させるが、校長らは上映を不許可。なんとかして上映しようと、彼らは策をねることに。

 3巻ではいよいよ文化祭当日。校長らをひっかけて屋上に閉じ込め、体育館でアニメ上映決行。ノンタの演奏やジョンのアドリブも入って、観客には大ウケ。ちょうどみていた理事の受けも良かったことから校長も手のひらを返して、大成功のうちに幕を閉じる。
 その後は新展開。新しいキャラ「レト(お嬢様系学校の女子高生)」との出逢いから、ストリート系のペイントアーティストを標榜する一団と対立。スプレーアートに壁に描くラクガキアニメで対抗していく。いつしか敵対する彼らもアニメ製作に巻き込んで、アニメ対決に。彼らとレトの対決の行方は……。

 最終回は大団円。レトらとの対決も終わり、また新たなアニメ製作をしている仲間たちの一日。それまでの作品から遠くのアニメ製作好きな者たちとの交流も始まっていて、彼らのアニメへの情熱はこれからも続いてくで終わり。

 アニメと書きましたが、このお話で主人公らが作るのは正確にはいわゆるセル画系アニメやCG、モデルアニメーションではなく、パラパラ漫画の延長、手描きの絵を撮影したアニメーションです。ある種原始的で単純、誰もが作れるシンプルなアニメーションを題材にして、その本編とはギャップのある絵柄が本編の絵に混じって描かれるという他に類を見ない演出がこの漫画の魅力のひとつ。セル画系アニメだともしやすると陳腐になりそうな、おそらくこうはならないであろう二種類の絵柄がミックスされたその迫力は、動画に対する感動を感じさせるすばらしい演出だと思います。


 ちょうどこれ買ったのと同時にもう一冊アニメーションをテーマにした漫画を買いました。こちらはアフタヌーンで(多分まだ)連載中の『ハックス!』です。描いてるのは今井哲也さん。これが初連載らしいです。去年、第1巻が出てます。

 こちらは純粋なアニメーションの楽しみ、もあるにはあるんですが、『空色動画』よりもうちょいストーリーよりのお話なので(もうちょいリアル?な学生生活)、主人公らキャラクターの話や学園生活、先輩が残したアニメの謎とかまあ色々たくさんネタが入ってます。素人アニメ製作についてもより実践的にお話に絡めて描かれてますね。パソコン使ってのパラパラ漫画とか、ニ○ニコ動画などへのアップで多数の人に見せるとか。絵柄についてはこちらも別の意味であまり上手いとはいえず、万人受けするような今風キャラでもなく。シナリオは『空色』より工夫はありますが画面というかコンテとしては圧倒的にあちらが上。ただしテーマが違うので、それは比べるほどのことではないかなー。いやうん、描きたいことを伝わるように楽しめるように描くという漫画家の技術としては『空色動画』の片山ユキヲさんのほうが上だと思いますが、それはフルアニメとリミテッド、いやパラパラ漫画とクレイメーション比べるようなものなのであまり意味ないという感じ? 漫画ってのはそれだけではないので、けしてこの作品があちらより面白くないわけではありません。

 主人公は高校に入学したばかりの女子高生「阿佐美みよし」。新入生歓迎会のOPに使われた1分ほどの自主製作アニメ(8mmフィルム)を見て感動。そのフィルムはかつてのアニメ研究部に残されたものだったが、当時のアニメ部の詳細や製作者については不明。しかし彼女はこの件で出会った先輩や同級生らを巻き込んでアニメ部の復興、アニメ製作へと突き進んでいく。

 主人公の熱意とその技術がみんなを巻き込みムーヴメントを作り出すという点では『空色動画』と同じ。ただ個性は随分違うし、熱意は同じなんだけど、こちらの主人公はもっと何考えてるかわからないタイプで(というか周りが色々考えるタイプなだけか。『空色動画』はもっと単純な性格のキャラばかりだから)、やたらと行動力があってその結果でみんなをひっぱってく(『空色』の主人公はおとなしくて引っ込み思案)。熱意と技術はヤスキチで、行動力はジョン──に近いけど性格はもっとわからない、というのがこちらの主人公みよしです。
 悩まない主人公だし、サブ主人公の男子は知識が豊富でどこか他人からうさんくさくみられたりと、読者によってキャラの好き嫌いはかなりあるかも。

 連載はほとんど見てないので今どうなってるかわかりませんが、こちらも先が楽しみな漫画ではあります。

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