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『この世界の片隅に。』下巻発売、完結。

 こうの史代の漫画『この世界の片隅に』の下巻が発売されました。
 無論これが最終巻で、完結。このあとに完結編とかはとりあえず出ない模様。

 雑誌「漫画アクション」はなぜか滅多に見かけないので連載中は殆ど読んだことはなく(連載が毎号でなかったせいもあるかな)、ほぼ単行本が初見でした。おかげでじっくり読めたと思います。これまでの作品と同じような作りなのですが、集大成というか、それぞれで使った漫画の文法を全部取り入れた感じ。無論大長編ではないので取り入れたといってもその分ストーリー漫画としての書き方は短くなってたり、ギャグ?というかコメディタッチの部分もオチに使われる場合が多く、新聞の四コマ漫画の拡張版という感じの話もありました。

 また、とくにこの下巻前半は情報が多くてちょっと忙しい漫画でもあります。上部に妹尾かっぱさんの著書のように当時の情報が図解されていて下部に主人公らの物語があったり、呉の軍港としての歩みが年表と平行して軍の組織をツリー状に表図されていたり。それがまた細かい。
 年表のエピソードではよく見ると一人の人間の絵が年代を重ねる軍組織の図の間にはさまるように描かれてますが、後半になっていくと主人公の義父(軍の技術系で働く技師)の半生が同時に描かれているのだとわかってきます。最初は母の背に背負われる子供、次第に大きくなり軍の技術部で働き、軍備縮小の折りには出て行く(リストラされます)し、拡張時にまた戻ったり配置変換されたりして、子供(主人公の夫)も生まれ、最後は普通のコマで主人公が嫁ぐ前の家族の絵になっていきます。

 しかし見事な傑作です。短くまとまりがある『夕凪の街 桜の国』のほうが日常の中に差し込む悲劇をよく表現し、完成度も高いかもしれませんが、こちらは長い時間(物語上で主人公が子供のころから戦後まで)描かれている分、戦前戦後の営み、日常がより分かり、のちの悲劇がずっしりくる感じです。下巻では戦争も激しくなり、主人公の身近にも悲劇が起こります。それでもなお、普段の生活でのちょっとした笑いも、終戦における憤りも悲劇に対する気持ちも描かれた上でたくましく──というかおだやかに日常を生きていく人たちの物語。

 戦前戦中戦後の暮らし向きが細かく描かれているだけに実際どこまで真に迫っているかはわかりませんが、そういった文化的な側面もあわせもつ連続TV小説的ドラマとしても楽しめますので、若い人(って自分も含めてそういう生活を知らない戦後世代)にも読んでほしい漫画ですね。重いし時間がかかるけど、上中下巻、一気に通して読むとまたいいかも。

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