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孤高のヒーロー「仮面ライダー」ついに完結。

 和智正喜さんが書かれた『小説版 仮面ライダー』が、復刻版として発売、完結します。

 講談社の新書判、ノベルズサイズのマガジンノベルズスペシャルにて、2002年に第一巻『仮面ライダー ──誕生1971』、2003年に第二巻『仮面ライダー ──希望1972』が発売されたものの、そこで中断されていたシリーズです。今回エンターブレインから、続編であり最終話である第三部『流星1973』といっしょに合本、完全版の『仮面ライダー 1971─1973』として発売されるそうです。

 いやもう、まさに待望。物凄く嬉しいです。やっと続編が出るー(最終話なのが残念だけど)。

 和智正喜版『小説版仮面ライダー』は、原作である漫画版やTV版の初代『仮面ライダー』を独自の解釈にて換骨奪胎したすばらしいヒーロー物語です。原作では当初孤高のヒーローであった仮面ライダー、本郷猛が主演の藤岡弘(当時)の大怪我による休演のため新たに2号ライダーが発案され、その後仲間が続々と登場しライダークロニクルと化しましたが、この小説版では企画当初通り本郷が唯一の仮面ライダーであると設定し、当時の社会状況を漫画版以上に取り入れ、そういう背景の中、いかにヒーローとして成り立ち、戦うかを描いています。

 漫画版ではバイクを自由に扱うスポーツマンでありながら基本は若き研究者というインテリ型であった本郷猛。TVではあまり描写はなく、スポーツマンっぽさがメインでした。小説版もどちらかといえばインテリ型ですが、大金持ちの良家の坊ちゃんというバックボーンはもっと普通の生まれに変わり静かな努力型の真面目なインテリ、戦後の煩雑とした背景と姉を早くに失くした少々シスコン気味のメンタルさなど、原作者石ノ森章太郎の他の作品に通じるキャラクター造形がより人間味を深めています。その上で改造された悲哀、懊悩、そして人間社会との希薄なつながりからいかに人類愛?を主とした戦いを決意するかというヒーローの造形に至る過程を実に丁寧に描いていて、おおよそそこらのライトノベルのヒーローものとは一線を画しています。

 一方的に巻き込まれ普通の人間でなくなるというヒーローものは今やありふれる設定です。無論当時としては「人間でなくなる」とこまでいくのは珍しい話なのですが。先に『サイボーグ009』という先輩がいたからこそなんでしょうが、生まれたときから9人の仲間がいた009と比べて当初からただ一人の存在として設定された仮面ライダーはその意匠とともにやはり異質さが表に立ちます。のちのキカイダーと同じく、兄弟と呼べる存在は敵にしかいません。そこから個人の悲劇を乗り越え人類愛をうたうヒーローになるメンタリティは、実はTV版どころか漫画版でもさらっとしか描かれてません(確か漫画版では第一話最終ページにおいて戦い続けることを宣言したと思います)。後継者たる他のヒーローものでも大体同じ。

 和智版でも当初は同じで巻き込まれ型で生き延びるために戦う道を探し、悩み、同じような犠牲者を生まないために決意するのですが、第二巻冒頭でいきなり挫折を味わいまた自暴自棄になって本当の戦う意味を探し始めます。第一巻終盤で感動的に戦う決意をしたシーンはなんだったのかと思わせますが、この挫折はかなり大切です。なぜなら敵がまさに一筋縄ではいかない相手だからです。

 基本、原作のショッカーは世界征服を企む悪の秘密結社です。企むということは当然まだ世界征服してませんね。もっともどう征服するのか最終形態がいまいちわからず、鉄面党らのように表でも完全支配したいのか不明なのですが、なんと小説版では実質世界征服は完了してるといっても過言ではありません。しかも浅く深く社会に溶け込んでいて、倒すといっても果てが見えない相手です。無論怪人らの秘密基地は確かに形としてあって、決戦などもあるのですが、組織としては基地とそこの人員だけではないのです。このショッカーの存在は第一巻よりもさらに重くなり、ショッカーの存在こそがこの小説版のテーマといってもいいかもしれません。
 どこにいるかわからないがどこにでもいる敵。人間らしい欲望を糧に、非人間的な行為を行う敵。非日常として暗い地下室のアジトだけが主体だったTV版と比べて、隣人として時には自らもその行為に加担しているかもしれないというその恐怖のショッカーは、時代背景とともに異様さを増しています(TVも初期ではそういう感じだったのですが)。第一巻で既に出てはいるのですが、第二巻ではアンチショッカー同盟の内実がより強調されショッカーの存在も逆に増します。人間に絶望したくなるようなその存在を相手に、本郷猛の勝利は、希望ははたしてあるのか。

 まあ色々書きましたが、情勢やら背景やら設定だけではありません。その筆致もすばらしい。アクションもさることながら本郷猛の意思、そのクライマックスに向けての心理描写と展開の盛り上がりもじわじわ来ます。そしてクライマックスのヒーローっぷりは、陰鬱な空気をすっとばす素晴らしいアクションとともにカタルシスを感じます。第一巻では仮面ライダーとしての名乗り、第二巻では一度は敗北した(正確には敗北感を味わわされた)相手に勝利することでより強くなったヒーローとしての立ち位置を。まさに待ちに待った読者の気持ちをスカッとさせてくれます。エピローグがまた単なる爽快感で終わらせてくれないけど……いや第一巻、第二巻それぞれに未来へ続くだろう希望を感じさせてくれるエピソードもありますので、読後が悪くなるほどではありません。ハヤトや田舎に帰る少女の話。まさに希望。なんつーか、涙腺が緩むオチをくれてありがとう。

 未読の方には是非にお薦め。
 ヒーローもの小説としては一級品です。原作のネームバリューにけして負けない、素晴らしい副産物。

 読後は和智正喜さんのサイトの中に発売当時のWEB版あとがきなどがありますので、そちらを。書籍を読んでから見ることをお薦めします。
 サイトは最近更新されてませんが、ブログ『和智日記』もされてます。こちらでは復刻版のまえがき書かれてますね。発表にいたる記事は読んでるとホントにうれしいところ──おや、第一部から三部までのページ数が。

 第一部「誕生1971」 180P
 第二部「希望1972」 195P
 第三部「流星1973」 225P

 うぉおっ、さらにページ数が増えてる!
 これはもう期待するしかっ。
 ブログの記事見てるとやはりショッカーの存在がキモになるようですが、どうオチをつけるのかなぁ。第二巻の内容考えるとショッカーはブラックゴースト以上に滅びようがないような……。
 ともあれ第一部からじっくり読み返すでしょう。


 復刊ドットコム 仮面ライダー 1971-1973 【復刊書籍】

 Amazon 仮面ライダー 1971-1973 (単行本)

 復刊ドットコムのMLのおかげで知りました。ありがとう。
 でも予約したのはAmazon(すいません)。復刊ドットコムで復刊希望してたの知ってたら、一票入れてたのですが。
 Amazonには表紙の写真もありました。ブログにも載ってましたけど(登録当時に和智さんの名前が入ってなかったなんてやっぱAmazonだなぁ……)。

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コメント

 おお、それは楽しみ。しかし、地味な表紙ですねぇ(笑)。
 既巻二冊は、知人に貸して本当に喜ばれました。わたし発見(?)で薦めたものは、音楽・映像などいずれもピンと来ないようなんですけど……(例外は、『電脳コイル』ぐらいかしら)。
 でも「流星」じゃあ、墜ちてしまうのかなー。お嬢さま&蛇姫は、活躍できるのかしら……。

投稿: 翡翠 | 2009/01/21 23:09

やずみさん

 お疲れ様です。
 いつも記事は拝見してます。
 テクサポの人間としては非常に興味が持たれる内容でいつもコメントをしようと思うのですが・・・根がなんちゃってな人間なんで、つい書きそびれてしまっていますw

 さて今回の記事のノベルですが、書店で見かけたような気はするのですが、完全にスルーしてました。(正直悔しいですw)
 でも完全版として復刻されるということなので早速予約しますです!

 平成ライダーも悪くないですが、個人的には原作の悲劇の改造人間・・・孤独な影のあるヒーローが大好きです。

なので、やずみさんお勧めの本作品は期待して楽しみにいたします♪

投稿: えいしん | 2009/01/21 23:44

 翡翠さん、えいしんさん、コメントありがとうございます。

 このような傑作の読者の環ができることは大変よいことです。できれば買わせるともっと。──別に会社や著者の回し者ではありません(笑)
 是非そのご友人にも教えて差し上げましょう。「買え」と。何かの際に自分のものが失われても、大丈夫。

 緑川ルリ子と蛇姫はショッカー絡みの話がある以上、そして完結する以上は出てくるでしょうけど、どういう風になるかわかりませんね。ショッカー意外にも……?なんてコメントもあることですし。


 えいしんさんは専門の方でしたか。
 パソコンの不調は色々な理由があると思うのですがノートだけに本体はどうにもならんとあっさり諦めたのは時期尚早でした。デスクトップの大型だったら、ああでもないこうでもないとまだ調べたんでしょうが。
 自分で買ったものじゃないんですが、一応立ち会ってメモリも買えと言っていたのに……サービスからも元の形に戻してと言われてオッケーしたのに(いやまあ買ったときからメモリ付いた状態だったから……と言い訳)。

 それはともかくこの記事で少しでも読者が増えるのはいいことです。たとえ今回で完結するとしても。好みは人それぞれなのですが、原作好きなら多分大丈夫かと。
 読んでたときはキャラクターは漫画当時でなく少し後の石ノ森時代の絵で脳内再生してました。大柄な本郷が自暴自棄なころの姿がなんか引き上げ兵みたいなイメージという文章が確かありまして(記憶違いでなければ)、少しハードな劇画タッチになったころの石ノ森キャラのほうがイメージあいまして。
 他にも絵にはなりにくいけどショッカーの「博士」などははっきりあのお声に変換されて読んでました(笑)

 逆にマシン・サイクロンは平成のメカに対しても素晴らしいメカっぷり、アクションぶりで、これよ、こういうバイクアクションが見たかったのよという出来。時代を先取りしたショッカーの科学力の結晶、ライダーのシステムとして完成されている意味がしっかり描かれて最高です。そのためデザインはやはり旧サイクロンのイメージなんですがメカとしては映画「THE FIRST版」のほうもダブります。今度出るS.I.C.の「仮面ライダーTHE FIRST版 サイクロン号セット」などはそのせいで欲しくてしょうがない。ライダーの設定(服とか成功例とか)なども映画版と通じますし。つかもうそのままあれ素材に使って映像化してもいいんじゃね?というくらい。
 これほどバイクとライダーの相性がいい話も珍しいです(別にバイクばかりで戦ってるわけではありませんが)。漫画版でもいくつかバイクテクニック使われてましたが、こちらは『ワイルド7』並の活躍にそれ以上のスーパーバイク。ライダーとしてはブラックとバトルホッパー、クウガとゴウラムのコンビを彷彿とさせます(自由意思は持ってません)。

 いやもう、ほんと実写は無理かもしれないがアニメでいいから映像作品でも見たい(実写となると映画は短すぎる、TVは予算がとれないだろうしCGがCGぽくなりすぎる、OVAだと長さも予算もそれなりだろうけど途中で打ち切りの可能性も)。キカイダーや01を原作テイストでアニメ化して受け入れられたんだから、これも出来ると思うんだけど……業界的にはファンはそれほどいないんだろか。

 あ、原作ファンにはハヤトや弐番のエピソードやライダー(怪人含め)の設定は燃えますし、当時の雰囲気がわかるならショッカーのイメージも楽しめます。

 予約しとくにこしたことはありません。特に田舎じゃあまり回らないかもしれないので。以前のノベルズは、ほんと見かける本屋が少なかったし。

投稿: やずみ | 2009/01/22 00:49

>  是非そのご友人にも教えて差し上げましょう。「買え」と。何かの際に自分のものが失われても、大丈夫。

 多くを言わずに発売を知らせたら、予約したそうです(笑)。

投稿: 翡翠 | 2009/01/25 18:58

> 多くを言わずに発売を知らせたら、予約したそうです(笑)。

 ぐっじょぶ!

投稿: やずみ | 2009/01/26 04:52

 明日発売ですね。
 昼休みにも本屋さんに行って購入します。

投稿: 神子秋沙 | 2009/02/15 23:15

>明日発売ですね。

 今日(16日)でしたっけ。Amazonで予約してたので、昨日(15日)到着しました。今、久しぶりに第一部読んでるところです。いやーちょこっとだけと思ったけど、止まらんわ。

投稿: やずみ | 2009/02/16 02:23

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