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『狼少女』はだれか。

 映画『狼少女』を観ました。但し去年の話(この記事は2007年4月16日に書きました。以後注意)。

 発端は翡翠さんとこの記事で、ちょっとおもしろそうだと思ったこと。それから一週間も絶たない金曜日、新聞見てたらなんと上映するとの記事が。美術館ホールにて土日(4/14、4/15)の二日間、去年地元で自主上映などで公開された映画から朝日新聞地元支局の選考会で選ばれた海外、日本それぞれのベストテンのうち第1位ともう一つの、計三作品を上映するとのこと。その日本映画第1位に選ばれたのが『狼少女』だったのでした。ちなみに外国映画第1位が『歓びを歌にのせて』。未公開映画から選ばれたもう一本は『カポーティ』。残念ながら都合で第1位の二本しか見られませんでしたが、十分元は取れました──というか無料だったんですけどね。

 簡単に『狼少女』について感想を。
 粗筋は公式サイトで。

 まあてっとり早く言うと、どこかで聞いたネタを上手いことあわせたプロット……か。
 もっともこのどこかで聞いたというのは「いかにも」なだけで、確実に聞いたとはいいきれない郷愁のようなもの、またはマイナーな漫画などを読みあさる人間にしか通用しないイメージかもしれない。
 あえて言うなら、プロット、シナリオは昭和だが、造りがどうも平成の感じがして惜しい。または映画なんだけどTVぽい。逆に漫画なんだけどTVドラマっぽい。そんな違和感がどこか残る佳作。あと一歩で傑作になるはずなんだけどどこか甘い感じが残るのはなんでだろう。スタッフ見ると結構ベテラン揃い。監督が若すぎるのかな……いやでも物語としての完成度は標準以上だし。シナリオは小川智子(1962年生)で、監督は深川栄洋(1972年生)。

 シナリオだけで考えると、ぶっちゃけプロットは昭和生まれなら多分苦もなく受け入れられるスタンダードな少年少女の出逢いと別れの物語。なぜかというと中流と貧乏と単純ないじめと子供らしい認識、そこに田舎の身近な環境の現実が入り混じって同居してるから。にしても平成生まれの若者にちょっと聞いてみたいのが、お化け屋敷はともかく(もっとも今のお化け屋敷とはまるでイメージ違うけど)、見せ物小屋がお祭りに来るなんての見たことあるのか。話にも聞いたことあるか。そこにどんなイメージがつくのか。
 知ってる私ですらこういった雰囲気のお化け屋敷はともかく、見せ物小屋はいまいち覚えがないです。まあわりあい大きな地方都市の大きなお祭りでは、見せ物小屋も家族連れで入るようなところなわけもなく(お化け屋敷兼見せ物小屋?はあったけど、中身は記憶があいまい)、神社のお祭りじゃ見せ物小屋なんて来ない(置けない)小さな神社だったりしましたね。
 そんなわけで、一番イメージに残ってる見せ物小屋は寺山修司の映画だったりします。いや見せ物小屋がそのまま出てきたか定かではありませんが、数作の映画は全体で見せ物小屋の雰囲気をかもしだしてました。

 どこか漫画のようでTVドラマっぽい。時折漫画のギャグのようなピタリとはまる(たまに少しずれてる)ギャグが挟まってますが、これが昭和生まれ──というか多分1980年代までの漫画などに親しんだ人には非常に馴染みのあるシチュエーション。これはシナリオだけでなく、子役の力が重要ですが──特に数シーンでは主人公・明の友達マサシがいい味を出してます。彼の絡むシーンだけ見ると、多分打率8割は超えてる。漫画的に全体を見ると、助演男優賞は彼しかありません──ちょっといかにも棒読みっぽいところもあるけど、演技全般はすばらしくこの映画の良さは全くこれにつきるかと。これがファンタジックな話だったりすると別かもしれないけど。ただ、そういった内容に反してよくできた漫画ならピタリと決まるところ、これが案外少なく、ドラマにはよくある言葉で説明するけど、実際見た目(映像で)何故そうなるかというディティールがところどころ抜けてる感じがしてしょうがない。演出意図でわざと切って飛んでても本筋に絡まずイメージにも付与されないところがあるのはわかるけど、いらぬイメージや欲しいカットが抜けてる気がしてしょうがない。ギャグや感情の大きなブレのシーンは極端に、ある意味漫画的にしたほうがより感情に訴えるだろうに、そこも案外少ない。だから漫画的なところがドラマ的に薄められてる感もある。公式サイトのタイトル画はかなりいい感じなのですが、こういったイメージが昼間のカットに少ないのが残念。

 話は変わりますが、ちょっと前にNHKで『中学生日記』のそれはそれは古い話を再放送してました。なんでも当時子役だった俳優が、今度父親役で出るのでその前宣伝といったところ。これが稚拙なところもあれば生々しい青春の痛みというやつが出てたりしてとにかく時代の息吹と中学生の力を感じる良作だったのですが、映像が荒く多分16㎜どころか8㎜じゃないかな、その映像の迫力が凄かったです。当時そのままだったから当然だけど昭和の色がビンビンに出ていて。正直これがこの映画に足りないものかなと。映画では夜のシーン、特に見せ物小屋やヒロインらの室内の照明や色には昭和の雰囲気がかなり出ている気がして、やはり今どきの外の空気はたとえ田舎だろうと昭和の小物を散りばめようと直に撮っちゃだめな気がしました。消せるものは消すようにし(カット割りでもなんでもで)、不自然なエフェクトでもなんでも使って、時代の空気をそのまま持ち込まないようにするべきなんじゃなかろうか。 
 最後にもう一つ。主題歌「melody」はいい歌でした。しかし、この映画に合っているかというと微妙にズレてる感じ。曲は思うにストーリーには合ってる気がしますが、完成した映像にあっているかといえばかなり浮いてると、流れだしたときにその唐突感で感じました。ある意味余韻ぶちこわし。公式サイトの予告編を見ると悪くはないんですが、この歌のイメージは内容からすると若干あと、そう十年くらい早い感じですね。もっと静かでスローな歌のほうが余韻にあっていた気がします。

 そんなわけで絶賛とはどうもいえませんが、十分楽しめる作品でした。最初見に行くときは無料ってことを知らなかったのでホールに着いたときラッキーと思いましたが、見終わってもし最初の予想通り1,800円ほど払っていたとしても損したとまでは思わなかったでしょう──ただもう一本の映画があったからともいえますが。『歓びを歌にのせて』は良作でした。オチの部分とかなんだそれと思いましたが、全体的によくできた映画で楽しめました。個人的に率先して観に行くタイプの映画でもなかったですけどね。

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コメント

 わたしの記事、絶賛してましたねぇ。読み直すと恥ずかしい……(笑)。

 怪人エリックを知った後だと、大変かわいらしい見世物小屋ざんす。(あれはあれで、ロマ(ジプシー)扱いが微妙だけど)

投稿: 翡翠 | 2008/10/03 00:58

 面白くなかったわけではないのですよ。ストーリーはどこかで聞いたようなと書きましたが、嫌いなわけではありません。ただ音楽とか色合いとか良かったのですが、なんとはなしにあの映像のあちこちに惜しい感が漂っていたのでした。逆に言えばプロのあざとさがなかったということでもありますが、なんかデビュー当時の大林監督作品にはあった同人臭さががこれはもう少し足らない、という感じがしました。

 子役はちょっとクセのある演技だけどおおむね良く(子供が主役ですから)それが映画の魅力になっていたのは確かです。個人的に主人公の親友が一番魅力的でしたが、ヒロイン二人も役柄はすばらしかったし、落とし穴のシーンや最後の追いかけるシーンなどではいじめっ子もいい味出してました。あと話が読めていても楽しめたのはやはり脚本の力と脇役の味かなぁ。

 上の記事、当時書いたものだからどうしても足りない部分は何かが気にかかってしようがなかったわけですが、小さな画面で見るとまた違うのかも。ああでも、夜のシーンや見せ物小屋のシーンは劇場で見た方がいいですね。

投稿: やずみ | 2008/10/03 02:31

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