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倉橋ヨエコ『解体ピアノ』購入。

 えらく間が開きましたが、うちにも届きました。倉橋ヨエコの最終アルバム『解体ピアノ』
 他のものと一緒にAmazonに注文してたんですが、辛抱切らして先にお届け(ちなみに一緒に注文したのはアニメ『時をかける少女』のBlueRayDisk)。

 前に聞いたころよりずっとポップ。一曲目から非常に明るく、歌以外別人が作ったのかと。いえ歌詞は相変わらずなんですが、あまりに軽快にノレるため、歌詞聞きそびれそうになるんですよね。1曲目もそうだけど、3曲目の「春待ちガール」などいかにも。栃木の海坊主さんや翡翠さんが『往年の矢野顕子に似てる』と評されましたが、確かに声の寝かせ方といいますか歌い振りが似てるので、曲調が同系統になると余計に似てるような。個人的には矢野さんはあまり聞き込んでないせいか、1曲目、2曲目と合わせてEPOっぽさを感じました。あ、2曲目「依存症~レッツゴー・ハイヒール~」のメロディの頭はずばり『ジャングル・ヴギ』を思い浮かべます。いや歌い振りもあれなんでかなり印象が似てると。

 1曲目「鳴らないピアノ」。タイトルと歌詞から想像したとは逆、かなりポップで明るい出だしに噴きそうになる。メロディや歌詞は相変わらずのヨエコ調だと思うのに、アレンジが妙にポップなのが不思議。一巡して二回目聞いてると、このアルバムの中ではやっぱりヨエコ調の歌だったことに気づく。
 2曲目「依存症~レッツゴー・ハイヒール~」。先に書いたように、誰がどう聞いても出だしは「ジャングル・ヴギ」。おいおい昭和歌謡というが、これまた物凄くさかのぼってるな。それだけにラテンで、アルバム中一番ノリがいいかな。歌詞はよく聞くと凄いんですが。カラオケで一番歌ってみたいが、難しくて歌えそうにない。
 3曲目「春待ちガール」。これも相当にポップ。えーとメロディがこれは……忌野清志郎が混じったEPO? いえ1曲目どころではないほどポップなので、今までのヨエコ調との物凄い違和感が。でもいい曲です。これもノリがいいし、このままCMに使えそうな歌ですね。
 4曲目「電話」でひさしぶりのヨエコ調。ただやはり「楯」のころと比べるともっとポップ。毒のないわけではないけど、恨み節がズンっとは入らない、都会の歌という感じに。昭和歌謡といっても昭和末期感覚か。これの一部のほうが矢野顕子っぽく感じたのは、私があまり矢野さんの歌を聞き込んでないからでしょうか。
 5曲目「裏目の女」。ああいいわ、これぞヨエコ調。やっぱり軽めになった感じもあるけど、サビの部分なんかはしっくりくる。昭和40年代後~50年代くらいの味が残ってる。サビのノリだけで押せる、パンキッシュなアニメ調。歌詞はアレなんでアニメは無理だけど。いやでも歌詞よく読むとかわいい女の姿が見えますが。内面可愛いし、見た目も悪くないのになんか暗くて相手にされないよーな、漫画の。いーなぁ、このノリ。
 6曲目「友達のうた」。やっぱりヨエコ調。もうちょい40年代より? うわーパンタロンとかボーイッシュなヘアスタイルとか大きめのグラサンとかオレンジやイエロー主体のポスターカラーが目に見えそう(別に普通の今のボーイッシュでかまわんのだけどつい)。2本続けてノリのいい、どっかのアニメのOPにも使えそうな曲が続きますな。
 7曲目「恋予報」。これまた、80年代からの物凄いポップ。まさにEPOとか当時のトップクラスに並ぶ軽快さと美しさの並ぶメロディと声。よく見れば歌詞も相当そっち系。ヤマタツ系に少し足らないのは、余韻か。あの頃のノリだとサビの終わりに空へ溶けるような伸びで、声がフェードアウトしていくタイプ。いえヨエコさんもしてるけど、こんなものじゃない伸びが欲しい。それくらい曲がいい。いやー高校のころ思い出します。LPレコードからCDに変わる転換期、よくこういうの聞いたなぁ……。夏の青空と海とFMラジオが強烈に似合いそう。知らない人にこれだけ聞かせたら、間違いなく倉橋ヨエコ、誤解しますね。
 8曲目「バルンの不思議な旅」。これも同様80年代ポップの流れ(なんでもかい)。ライトだけどサビの繰り返しがいい。7曲目に比べると、これは地方の街のイメージ。石畳とか蒼い空とか。やっぱり夏だけど。ただ80年代の本家歌手だとおそらくもっと高音効かせて伸ばすところが伸ばさないあたりがヨエコ調なんだろうか。もう少しスローにすると、より80年代ポップスかな。須藤薫にも似てるかも。
 9曲目「あなた」。歴史に残る名曲。オリジナルがあまりに完成度が高いだけに、あの世界そのままは無理があるが、こういうアレンジは正解だと思う。歌いっぷりもらしくていいと思うが、当時ハマった人からはどう思われるか興味あるなぁ。私は子供だったのでリアルタイムでの思い出はあまりありません(聞いてなかったはずはないけど、ムーヴメントみたいなものは覚えていない)。いい歌だなぁと再発見し思ったのは十年後くらいでした。
 10曲目「雨の羽生橋」。きたきたきた。また重いバンドで、これはあれか、ザ・ピーナッツか、ピンキーとキラーズか。さすが昭和歌謡。無論まんまじゃなくて歌も歌詞もヨエコ調なわけですけど。それでも昔に比べてずっとポップになってるか。いやでも、こういうのが好きなファンは多いだろうな。いや歌詞読んでるとひたりすぎてひたりすぎて。
 11曲目「マネキン人間 ~Extra Piano version~」。ああええですなぁ。「楯」の系列、倉橋ヨエコの真骨頂というか、昭和歌謡でもなくヨエコ調としかいいようがない歌。曲もいいけど、特に歌詞が。日付のカウントダウンと繰り返しが。まあ歌詞のせいか、曲のインパクトがくる場所があまりないような気もしますが。なにせマネキンになる──止まるってことで。つかこれがラスト前の歌でいいのかと要らぬ心配してしまうな。
 12曲目「輪舞曲(ロンド)」。これまたどこか明るくポップな、でも静かに進み、でも歌いっぷりがこれまでになく力入ってる。アルバム最終の曲に相応しい、歌詞と曲です。メッセージ性なんかは案外ポップになったあとの中島みゆき? 落ち込まず、前を上を先を見ていく、ある意味決別宣言であり応援歌でもある、メッセージを感じる曲と声。なんか、これで終わりって気がする。これでさよならって気がする。おっけー、がんばれよって気もする。大丈夫だって思う。そんな声を感じる、いい選曲です。廃業っつったって納得するしかない、これ聞いたら。フィナーレというメッセージですよね、この歌詞。

 何度か聞くとまた印象変わるでしょうが、これがとりあえずファースト・インプレッション。
 総評。全体通して、非常にメロディアスにまとめてある感じ。案外アレンジ次第でインストゥルメンタルで聞いても聞き応えありそう。歌は、どちらかといえばアルバムで通して聞くべき。一曲や二曲外して聞くよりイメージがはっきりする。今どき珍しいほどアルバムの意味があると思う。無論一曲単位で聞いてもいいし、歌いたいような歌もあるけど、それとは別にたまに聞くならループとかランダムとか選曲じゃなしに、一枚分通しで聞いたほうがいいですね。あと歌詞カード見ながらのほうがいいかも。聞きながら歌詞の意味とか考えるくらいとなると相当聞き込まねばならんので、聞きながら直に読んだほうがよい。もひとつ、これまともに聞き込むほどスピーカー音量上げられないので(聞けるの夜だしね)、今度はヘッドフォン使うかなと。別に大音響でなくてもいいが、声の張りが聞きづらいのはもったいない。ヘッドフォンでなら、よりアルバムにひたれますので、たまには世知辛い世の中忘れて、聞き込みましょう。

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コメント

 音楽ディレクターさながらのリヴューですね!

>  3曲目「春待ちガール」。これも相当にポップ。えーとメロディがこれは……忌野清志郎が混じったEPO?

 『い・け・な・い ルージュマジック』!(笑)
# ちなみに矢野顕子さんで唯一まともに唄え“た”のは、NHKみんなのうた『ふりむけばカエル』!(笑)

 山下達郎さんと言えば、『高気圧ガール』!(笑)
 中島みゆきさんと言えば、「♪まわるまわるよ」の『時代』!(「輪舞曲」に符合しますね)

 つくづく温故知新だなあ……。

投稿: 翡翠 | 2008/07/19 00:41

> 音楽ディレクターさながらのリヴューですね!

 いえけしてそのようなものでは。全部狭い範囲のイメージでしか表現できてないですよ。音楽的言語知らないもので。

>忌野清志郎

 忌野さんといえば思い出すのは漫画『県立地球防衛軍』アニメ化の際の主題歌。なんというかダレたような歌詞のでもいつもの派手なノリの歌が素晴らしく、アニメ自体も面白くて好きでした。
 それはおいといて、ここで連想したのはとうぜん『ルージュマジック~♪』のほうです。EPOはサビ全体「あーなーたーと~中略~これが恋ですね~」ってとこですかね。

 山下達郎さんってのはまああの手のイメージの代表格なので。で山下さんのグループならきっと高らかに歌い上げるでしょうけど、ヨエコさんとは声の質がちょい違いますよね(専門用語知らんけど)。

 中島みゆきさんは、ある意味ヨエコさん系の元祖と言っても過言ではないと。同じではないけど。もっとも私もそれほど聞き込んではいなかったので(LP買うほど好きだった友人はいましたが、私はラジオで聞くくらい)どの曲がとまでは言えません。「時代」なんかはメジャーすぎてなんですけど、80年代に聞いたアルバムのものすごーく暗いやつは、ヨエコ調に近しいものがありました。

 「バルンの不思議な旅」は、前に聞いたある曲とかなりイメージ近いんだけど、なんの歌だったか思い出せないなぁ……。

 しかし聞き込むほど聞きやすくて爽やかな歌が多い気がする。「裏目の女」ですら明るい歌に聞こえてくるけど(末期まであと少し──「雨の羽生橋」まで来たら末期か)、「依存症」は十分明るいですよね? 踊るようなピアノにヨコノリで。

投稿: やずみ | 2008/07/19 03:36

>  忌野さんといえば思い出すのは漫画『県立地球防衛軍』アニメ化の際の主題歌。

 それは知りませんでした。すごいマッチングですね!

>  しかし聞き込むほど聞きやすくて爽やかな歌が多い気がする。

 それは毒されてます(笑)。そうなると、「マネキン人間」ぐらいしかダウナーに感じませんね。

投稿: 翡翠 | 2008/07/19 21:18

・・・一日一回「解体ピアノ」を聴かないと。どうも調子が出ない”海坊主”です(笑)


「雨の羽生橋」・・・とんねるずの「雨の西麻布」とNG騎士ラムネ&40EXのED「四種の神器」とWっています(笑)

「裏目の女」のイントロ・・・パパパヤ、パパパヤがお気に入り(大笑)

投稿: 栃木の海坊主 | 2008/07/20 14:04

 忌野さんの歌う主題歌は「S.F.」、エンディングは「かくれんぼ」です。調べてみたところ、『県立地球防衛軍』のCDは出ても少なかったか、出そびれたようです。うちにはLPあったはずなんですが、さてどこいったやら(うちにある唯一の忌野清志郎アルバム)。
 今だとそれぞれ別の忌野ベスト盤に入ってますね。ちなみに両方とも忌野清志郎とCharの共作ということです。映像は見ずに、内容も関係なくてもいいからということで作ったそうですが、いい感じに砕けた、『県地』らしい歌です。アニメもいい感じでした。一応主役の盛田の声がアムロ、敵方の首領がシャアだったりしましたが。

> それは毒されてます(笑)。そうなると、「マネキン人間」ぐらいしかダウナーに感じませんね。

 然り(笑)。いやまだ「雨の羽生橋」も暗いとは思いますよ、一応。本当は歌詞だけ見てると半数はダウナーなんですが。

>「雨の羽生橋」・・・とんねるずの「雨の西麻布」とNG騎士ラムネ&40EXのED「四種の神器」とWっています(笑

 「雨の西麻布」はサビだけで出だし忘れましたが、なるほど「四種の神器」は出だしそっくりですね(全部は覚えてませんが確かに序盤こんな感じ。アニメは見てませんがCDは持ってます)。

>「裏目の女」のイントロ・・・パパパヤ、パパパヤがお気に入り

 あれいいですよね。「依存症」や「友達のうた」のサバダバダも好きです。シャバダバダじゃないのがまた(笑)

 「裏目の女」、あの巻き舌込みでまともに歌える女性がいたら尊敬に値しますね。カラオケ、あるのかなぁ。「楯」などはあるそうですが、あれを歌える人もやっぱり尊敬に……ちと恐い気もするが。

 そういえば、今日がツアー最後の日だったんですね。これで生ヨエコに会う機会はまずなくなった……曲は9月に出るベスト盤に新曲がもう一つ入るらしいので、それが最後なのねー。

投稿: やずみ | 2008/07/20 22:18

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