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最近買った漫画。谷 弘兒の新刊だっ。

 今回は古い漫画ファン、ちょっと?昔だと『ガロ』とか青林舎とか新しい?ところだと初期の『眠れぬの奇妙な話』とかがお好きな方に。よい子は見ちゃ駄目だぞ。

 知る人ぞ知る漫画家「谷 弘兒(たにひろじ)」さんの新刊『無国籍哀歌(エレジー) 錆びた拳銃(レボルバー)』 (BEAM COMIX)が発売されました(いやもう一ヶ月ほど経つけれど、この記事ちょっと寝かしてたもので)。

 私が谷さんの存在を知ったのはそう古い話ではなく(PCも持ってなかったくらいは前だけど)多分『ガロ』だったかと思いますが、短いながらそのすっきりしたペン画と点描の画面、妙に詩的な表現でどこか夢の中のようなそのシナリオが気にかかりました。その後ある日奇妙な人物の書かれた装丁の単行本が出て、前に見た絵柄だったし気の迷いで買ってしまったのでした。それが確か青林舎刊『薔薇と拳銃』……だったかと。実際中を見るとかつて読んだ詩的なものとどこか奇妙な話などが入っていて思ったよりも楽しめました。
 たしかその後が陰溝蝿兒(かげみぞようじ)名義のペヨトル工房刊『夢幻城殺人事件』、その後出たのが青林工藝舎刊『快傑蜃気楼(ミラージュ)』、で今回ので多分四冊目かな。ただ半分以上は私が知る以前、『ガロ』等で描かれたもので以前もマイナー系出版社から文庫化されてたそうです(青林舎どころじゃなく、田舎では見かけたことないです)。先の二冊は実はちょっとエログロで『薔薇と拳銃』に比べるとちょっとなんだかなぁとも思うかもしれませんが──一歩間違わなくとも十分下品なキャラクターも出てるのですが、絵柄のせいかどこかこっけい。線は全然違うんだけどどこか諸星大二郎に通じるところがあるような。実はクトゥルーもの系統の漫画も書いていて(どこかでイラストもやったとか)、それさえもおどろおどろしいものではなく暗がりすらカケアミのイメージののこる光り輝く異世界のイメージ。なんとなくますむらひろしと共通する現象の描き方かも。上手く言葉にできませんが、なんとも言えない魅力を感じます(今回の本だと「鏡」とか「夢の記憶」なんてのはいいほうのイメージ)。薄暗い路地とたばこの煙が漂うまち、どこかドラッグの酩酊に似た異形の姿などただエログロではないところも、他にない楽しみです。
 正直なところ一般受けするとは思えず、数年前にコミックビームで短編が不定期掲載されはじめたときは、そこまでやるかビーム……と畏れ戦いたものでした。しかし心配をよそに淡々と掲載は続き、今回まさかの単行本化とあいなったわけです。いやー、凄いわ、エンターブレイン。随分ソフト路線だとはいえ、これほどメジャーな(いや十分マイナーかもしれないが)漫画漫画してるところから出るとは。おお世紀末だなぁ(世紀頭だろう)。

 今回の『錆びた拳銃』、タイトルバックの「無国籍哀歌」シリーズは暗黒街や路地裏を舞台に、腕に人魚の刺青を入れたマドロス(船乗りのことね)が訪れた各地で出会うひとや事件を描き、その合間に全く関係ない詩的短編が入った比較的ポップな作風の本です。『夢幻城殺人事件』とかはかなーりアレな造りなんですが。

 冷静に漫画としてみると、作画的にはあまり強烈なものではありません。Gペンなどではなく、丸ペンとおぼしき線。舶来人形のような輪郭のキャラたち。ちょっと前にNHK-BS2で『とことん!石ノ森章太郎』という番組をやっていましたが、石ノ森漫画ほどの強烈さはあきらかにありません。諸星大二郎のようなおどろおどろしくも生々しい世界観でもありません(ただ内容としてはかなり似通ったところがあると思います。諸星さんはもう少し幅広いけれど)。十数ページ前後の短いものばかりで、大河浪漫的なものもありませんし、コマ割りも映画的なものではなく絵画的な感じで、ガロ系としては珍しいかもしれませんがそのあっさりめのところが好きなのかも。映画的でなくときにコマ落ちの動きや奇妙な動きをする実験アニメーションのような作風といいましょうか。

 そんなわけで誰にでもお薦めできるものではありませんが、おひまがあってふところに余裕があり、コミックビームで読んで拒否反応の出なかったひとにはお薦めです。順序としては『薔薇と拳銃』あたりを先に読んだほうがよさそうな気もしますが。

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