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最近購入した漫画本。

 ここんとこ書いてなかったので久しぶりに。

 まずギャグ漫画。
 『聖(セイント)☆おにいさん』 中村光・著 第一巻。

 『荒川アンダーザブリッジ』の著者による、まさに神をも畏れぬ連載ギャグ(というかコメディかな)漫画。「モーニング2」という週刊誌「モーニング」の増刊(月刊)での連載なので多分あまり知られていないと思うが──私もちょくちょく読んでたくせにこの漫画をまともに読んだのは6話だった──ちゃんと読むとこれがかなりおもしろい。主役はブッダとイエス。そうあの歴史上の聖人なのだが、世紀末も過ぎてバカンスとして何故か天界から地上に降りて6畳一間のアパートで共同生活をし、俗世間を楽しんでいるというお話──タイトルはつまり聖なるあんちゃん(またはにいちゃんともいう、他人の若い人を指す言葉)って意味で、別に誰かの兄というわけではない。まあどちらかといえば堅実で真面目で生活感が妙にあるブッダのほうが兄のような性格だけど。
 わりと真面目な(ついでに節約家の)ブッダと比べて、イエスはかなりミーハーでブログやったりヘンな陶芸やったりと、真面目なクリスチャンからはどうだろうかと不安になるほど俗な(下品じゃありません)二人のやりとりはなんともいえずほほえましかったり。性格はもとよりいいんだけどちょっと世間知らずな面が、基本である聖人としての立場からくるギャップとして笑えるわけだけど、丁寧な物言いや冷静ですっとぼけたツッコミなどあたりがやわらかいところがほほえましいんでしょう。お薦めです。


 叙情的でほほえましくもいつかは悲劇を予感させる漫画。
 『この世界の片隅に』 こうの史代・著 上巻Web漫画アクション作品紹介ページには第1話立ち読みアリ

 『夕凪の街 桜の国』で一躍知られるようになった著者の、少し同系列の漫画。読み切りのおとぎ話的な不思議な短編から始まっているので(読み切りは3篇で、その後漫画アクションでの連載から普通のお話に)スロースタートな感じは否めないし、上巻とあるからわかるようにそう長いお話ではないのでどういう着地がくるのかまだ不明。
 戦前戦中の廣島、呉などが舞台。主人公は「浦野すず」という女性。読み切りのおとぎ話敵第1話は、昭和9年で子供のころのお話(小学二年くらい)、その後子供時代の話を経て、タイトルの連載開始は昭和18年で、大人(といっても17くらいか)で結婚話が持ち上がり嫁に行くことに(浦野→北條すず)。今からするとかなり驚くことだが、結婚話はかなり唐突で、どこで根回ししたのかいきなり旦那側から申し込んで参上、結局すずがまともに話もしないうちに(呼ばれて家に帰ったものの中に入らず挨拶しなかった)「いい話だから」と直に会った両親が受けて成立。結局まともに話をするのは結婚式を上げてからという。ちなみにどうして旦那(北條周作)が結婚を申し込んだかは単行本を最初からよく読むとわかりますが、これは連載から読んだひとはかなり驚いたんじゃなかろうか。読み切りと連載は一応別なのでもしかしたらこのあと周作がすずに申し込んだ理由を話すかもしれないけど、どっちにしろ今の若者には親がOKしたからと素直に嫁にいき、周りも全くおかしく思わないこの時代がどう見えるのか、こういう時代だったと思ってくれるのかが人ごとながら気になるなぁ。

 戦前のころはなんというかおとぎ話の続きのようなちょっと不思議だったりどこかほのぼのする話だけど、嫁に行ってからはそういうおとぎ話な内容はない。もっとも戦中ながらまだそれほど厳しくないころだし、主人公が子供のような純な心を持ちちょっと天然が入っていて苦労を苦労と思わない性格なので、小姑のいびりもいびりと感じず貧しいながらもゆるやかで優しい生活が描かれている。ただ嫁入りした家は呉だし、実家は廣島市の中心近く(江波というところ。漫画だけでは地理が全くわからず──まあ気になるのは海辺で潮が引いてるときに海を歩く話だけですが、Googleマップで調べるとその場所に愕然としました)となると昭和20年が気になって、読後はほがらかな気持ちだけってわけにもいかない。続きが気になる作品です。
 個人的には『夕凪の街 桜の国』以外だと『長い道』がお薦めですが、これも多分かなりいいかと。


 ほのぼのしみじみじんわり笑える漫画。
 『モンスターキネマトグラフ』 坂木原レム・著 全一巻

 月刊COMICリュウで読み切り、その後連載された戦中戦後を舞台とした、まあファンタジー漫画。新人ながら達者な構成と画で読み切りからかなり読ませるもので気になっていたところ、まさかの連載で続く。そして待望の単行本化。本編もよいけど、あとがき漫画がまた。絵柄からもわかるけど女性で、やはり特撮(怪獣もの)オタだった(笑)。『ガス人間第一号』と『マタンゴ』が好きとは、なるほど気に入るわけだ。
 お話は、昂奮すると怪獣に変身する(ただし一旦変身すると次は12時間以上必要)人間が普通に認知されている(といっても社会的に受け入れられているとは言い難い。人権はあるので生活はできるけど、仕事は首になったりする)日本の戦中から戦後が舞台。戦中、軍の兵器として怪獣に変身し敵を撃退する兵士だったマミヤさん。淡い恋もあったもののそこは戦場、悲恋で終わる。戦後隠れるように暮らしていたが怪獣映画を撮りたいと熱心に語る映画人にスカウトされて(怪獣として)映画に出ることに。それを契機に前向きに生きはじめ、その後いろんなことがあるけれど最後はハッピーエンドでいい感じに終わります。全5話。第1話は悲恋と希望、第2話は映画を通して生きる気力をもらい、第3話では新しい出会いとコメディがちらほら、第4話と5話は続きものでハッピーエンドへ向けてのクライマックス。3話や5話の流れはなんつーか、ハッピーエンド主義者にはたまらんです。
 はっと気付けばマミヤさん、名前がわからん(笑)。戦時中マミヤ伍長と呼ばれる以上マミヤは姓なんだろうけど、下の名前は出てないぞ。ナカジマ、最後に下の名前くらい呼べ(笑)

 絵柄はちょっと古目ですが(怪獣なんかは特に。まあこれはわざとかもしれないけれど)、まあお話もいかにもな話だけど、マミヤさんが魅力的でナカジマもいいやつで、いやなやつはいても基本的に悪人が出てこない漫画なので安心して読めます。そういえばマミヤさん、関西弁やいつもすがめてるような潤んだ目もあって色っぽいんですが(裏表紙などのイラストはアレですが本編じゃ期待しちゃいけません)年齢もわからない。もっとも3話じゃ東京タワーができてるわけで、とすると戦時中に17歳以上として、少なくとも三十台半ば以上……なるほど熟女であったか。派手ではないけれどお薦め。


 『ナツノクモ』 篠房六郎・著 第8巻(最終巻)

 月刊IKKIで連載された漫画の最終巻。ネットワークRPG(近未来っぽくキーボードはなくてデカいヘルメットかぶって接続されているが、漫画でのゲーム内描写自体はわざとリアルに描かれている気がする)の世界を舞台に繰り広げられる人間模様。ネットのキャラクターを借りながらもオフラインの人間性が描き出され、実生活で作られた心の傷が(その原因は特に描かれないが)時に癒されまた傷つけあう様を追う人間ドラマ。シンプルな筋立てだが、人の思惑と描写が入り乱れるため連載で途中途切れると状況がわかりにくくなるため、単行本で一気に読むほうがよい(まあ連載もう終わってるので気にすることもないが)。
 センセーショナルな事件を起こした若き尊属殺人者が運営していたファンタジーRPGの1ボード(サーバ、というか今だと大規模なBBSみたいなものでいいかな)「タランテラ」。事件が公になりゲームマスターが逮捕されたことで契約切れで消滅する予定だが、ネットの正義代行者やら面白半分の輩が侵入、そこに作られたセラピーホーム「動物園」を襲撃しはじめる。「動物園」とはGMが一部メンバーとカウンセリングやセラピーのために作ったグループだが、事件発覚で行き場のない少数のメンバーだけが身を寄せ合うだけとなっていた。彼らは、せめて消滅するまではそこにいたいと、園を守るために助っ人を頼むことに。自分も問題を抱えたまま助っ人となるコイルと相棒クランク、そして傭兵たち。次第に明らかになる彼らの心の傷、そして新たに生まれるつながり。強大な敵、友達にもなれたはずの敵。バトルと笑いとシリアスな問題が、ネットの仮初めの身体を通して語られる。

 最終巻はそれまで語られなかったボード「タランテラ」が作られたいきさつやGMの本性とその事件の概要などの秘密が描かれ、ラストでも本編の謎の一端が効果的に(読者相手に)暴かれます。誰がどう悪いのか、「動物園」の消滅はいつから始まっていたのか。やってることは近未来なゲームだけど、いやそれだからか内容は実際の文字だけBBSでもありそうな人と人とのつながりがテーマ。まとめて読むと楽しめますのでお薦め。

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コメント

 『聖(セイント)☆おにいさん』を『聖(セイント)マッスル』と空目してしまった私って・・・orz

投稿: 神子秋沙 | 2008/02/05 20:00

 まあよくあること……じゃないですな。今の若者にはわからんです──マニアならそうでもないかな。復刻してたのって何年前だろ。あれ買っておけばよかったかしらん。

投稿: やずみ | 2008/02/06 23:01

こちらでははじめまして”栃木の海坊主”と申します。
宜しくお願いします。 お世話になりました。

最近買ったというか、見つけたネットコミックで”HXL(ヒーロー・クロス・ライン)”というものがありました。
ご存じかな・・・?この作家陣コミックはアンソロジーコミックのように超常現象(オルタレイション・バースト)が起きて超常能力が覚醒した人々=能力者(ノッカーズ)を共通したテーマとして各作家陣がそれぞれの視点で展開(ストーリー物、ギャグ物、ヒーロー物、ナンセンス物、等々)していくという物なんですよね。


私としては、おすすめは村枝賢一(敬称:略)の「ジ・エンド」、長谷川裕一原作、栗原一美作画の「MEAN」
ああつ!名前忘れた「ギャラクティック・マンション」
松本久志「亡装遺体ネクロマン(タイトルの割に中身松本節炸裂(笑)馬場真夫「火星のココロ」・・・・・・・・・・・・ほぼ全部に近いです(笑)

早く作品が単行本化しないかなぁ・・・と期待しています。

投稿: 栃木の海坊主 | 2008/02/25 09:23

 栃木の海坊主様、こんにちは。先日は色々とありがとうございました。

 Yahoo!コミックで掲載?中のヒーロー・クロスラインは以前ここでも取り上げました。去年の11月の記事ですが、そちらもどうぞ。アニメ・コミックのカテゴリーを選ぶか、バックナンバー2007年11月のリンクで出てきます。

 こういう世界観が同じで各作家がそれぞれ書くのをシェアードワールドと言いますが、日本の漫画では珍しいです。おもしろい試みだし、内容もなかなかのものですよね。個人的にはメインの『ジ・エンド』と『火星のココロ』が一番の楽しみですが、他の漫画も好きです。Yahoo!コミックは全部とは言いませんが他にも案外おもしろいものがあるので、じっくり見て回ると楽しいですよ。

投稿: やずみ | 2008/02/28 02:06

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