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Yahooコミックに新ライン。

 Yahoo!コミックの無料マガジンに新しく「ヒーロークロスライン」というものが加わりました。タイトルからしてわかるでしょうが、ヒーローものが基本です。すべて新作ですが、これがなかなか興味深いラインナップ。
 まず看板と思われる漫画が、村枝賢一・作/画の『ジ・エンド』

 1999年9月、ある日突然怪物化し暴れはじめる人達が出現。後年『オルタネイション・バースト』と呼ばれたその現象、そして異能力を持った者たち──地獄の扉を叩いた者『ノッカーズ』。それから10年後、異能力を振るい犯罪を犯す者たちと対抗組織『BOOTS』との闘いの中、暴れるノッカーズに無謀にも立ち向かう少年の秘密とは?

 スポーツものや青春もの少年漫画で人気を博した作者が、『仮面ライダーSPIRITS』にて全く違うイメージを開拓(同時期に『RED』もあるが、あれは初期から持っていたものの完成品と見たほうがいい)。鋭く細密な画力と理屈抜きに熱いダイアローグで見事TVの中の話を本物として魅力的なヒーローものを描いたが、今度は完全なオリジナル。概要はわりとよくあるようなネタだけど、やはりちゃんと読めるのは『仮面ライダー』他で培った構成力ではないかと。主役の顔が相当変わってて、仮面ものでは悪人顔のヒーローはよくいるが完全に怪人顔(しかも正統派怪人でもなくゲテモノ)のヒーローは珍しい。第1話ではまだ決定的な見せ方はせず、暗かったり逆光の影の中だったりしながらかなり魅せる構成で、若干でも違和感をなくし慣れさせようとしているようでそこがまたいい感じ。正直あのデザインはどうかと思うけど、こうやってジワジワと見せるならふつーにカッコいい登場も期待できるかも。

 で今回の雑誌で変わってるのは、このノッカーズの世界観をそのままに他の漫画家たちも漫画を描いていること。誰の設定かは知らないけど、少なくとも今現在連載されている八つの漫画のうち七つは第1話で確実にすべて同じ世界観でノッカーズが話題になってる(残る一つも他の漫画にキャラのシルエットが出てるので多分同じ世界観)、いわゆるシェアードワールドと呼ばれる創作形態をとっています(だもんで、ヒーロークロスラインなんて名前になったのだろう)。こういった漫画雑誌はアメコミ以外、日本では初めてでは。日本でも小説ではシェアードワールド企画ものいくつか出てますが、これも雑誌では無いはず。
 まあ同じ世界観といっても同じ世界とは限らないんだけど……。というのも『ジ・エンド』の冒頭に『オルタネイション・バースト』の表現として無数の地球があって、その地球同士がぶつかるシーンや、主人公の前に謎の映像が見えたりするあたりからどうも平行世界がからんでる感じがするし、他の漫画が基本的に現在とさほど変わらない街並みなのに、ある漫画の舞台が火星のドーム型移民コロニーだったりしてかなり違和感が(単純にさらに未来が舞台なだけかもしれないけれど。西暦は不明)。

 さて他の漫画ですが、次に他作品とは違う異色の作りと思えるのが馬場民雄/作・画の『火星のココロ Beautiful Little Garden』。馬場さんは、これも少年漫画で結構変わった料理関連の青春漫画他で人気のある漫画家さんですが(村枝さんのアシだったとか)、Yahoo!コミックではこれまた変わった教師と生徒+サスペンス+ちょいオカルトもの『デカ教師』を連載し(終了。単行本全3巻発売中)、なかなか楽しませてもらいました。さらに今回の漫画で、個人的に株が上がる一方。確かな画力と構成力で先の村枝さんと同様に安心して見られるレベルながら、ある意味漫画らしい突拍子もないネタが少し入る分こちらのほうが変わってておもしろいかも。というか、絵柄とノリを外すと実はこのシナリオ、ふくやまけいこが描いても違和感ないんじゃないかな。『星の島のるるちゃん』とか『ナノトリノ』にどこか通じる感じがして(無論ほんとにふくやまさんが描いたら全く違うイメージの漫画になりそうですが)。とにかく良心的なジュヴナイル漫画描きと個人的認定(魅力的な大人の女性も描く)。

 西暦はわからないけど、火星歴10年。地球はノッカーズ問題で大変だけど、火星のコロニーにはノッカーズはいない。しかし火星コロニーは厳しい環境と低い出産率に悩まされ、決して楽園ではなかった。コロニーに降り立つシャトルに乗る男アレスは妻と娘の心配をしつつも、オリを溶かして脱走した生物の騒動に巻き込まれる。そのころコロニー内に住む少女ココロは養母マサコの流産に対し、もらい子である自分が母の助けどうすればなれるかなど心配事に疲れながらも健気にふるまっていた。そんなある日、町外れで一匹の仔犬と出会う。

 この漫画のもう一つの特徴は、普通の漫画と違い左から右へ読むこと。よく見ればフキダシも実は横長で台詞はみな横書き。つまり英語圏への展開を考えて描いてることです。宇宙というか火星コロニーが舞台で一応SFだけど、ガジェットはほとんど今と変わらず、少女が主人公でおそらくその生活と心理描写がキモの話のはず。なのに欧米向けフォーマットとはなんと冒険心の高い──。ううむ、『デカ教師』につづいてまたウケの悪そうなつくりが心配でなりません。正統派ですが、欧米受けするような感じじゃないのになぁ。しかもヒーローものの中にあって日常ものとは。
 キャラとしてはこれまでの集大成のような感じで、がっしりしてあごの無精髭?も頼りがいありそうな親父、繊細そうだけど芯はしっかりしている優しく美人の母親、健康そうで健気でかわいい主人公。そして異様に可愛い子犬(そこかっ)。いうことなし。つかもう犬にメロメロ。是が非とも単行本最低二三巻出すほどがんばってほしいです(一巻分では終わってほしくないのだけど、かなりそんな雰囲気がー)。

 次に『MEAN 遥かなる歌』。作画は新人の栗原一実ですが(知らなかったけど、そこそこ単発仕事してて今回が初連載とか)、原作がなんと長谷川裕一(師匠だとか。同じYahoo!コミックで『マップス ネクストシート』連載中)。もう言い回しからコンテから、長谷川節炸裂。栗原さんの絵柄の裏に長谷川さんの絵柄が透けて見えるよう(正直こう長谷川漫画おなじみの広がる空間の構図というか描き方はまだまだですが)。
 長いし謎だらけなのでストーリーは割愛。第1話は見事に長谷川漫画の王道の第1話してます。一番最初ではなくちょっと後から話が始まり、謎がどっと出て、唐突に巻き込まれ、衝撃の告白があり(なにか究極の制限なども早々と出る)、ここから未知の冒険の始まりという感じがばりばり出てきます。無論同じ世界観なのでノッカーズ絡みらしいんですが、主人公側は普通にノッカーズ絡みではなく、その裏、真実に絡むような感じ。シェアードワールドってのは上手くすると同じ事件を別の視点で見られて、事件の全貌がわかったりキャラクターに深みが出るものですが、うーむ、正直『ジ・エンド』とこれを同一時間上に乗せると結構違和感あるな。小説ほどにはリンクしづらいのは、やはり各自の絵柄でかなり印象が変わるせいだろうなぁ。

 最後にもう一つ、松本レオ・作画/たかしげ宙・原作の『クランド』。これまた知る人ぞ知る実力派の松本レオの久しぶりの連載漫画。しかも原作はアクションもの少年漫画の原作で売れまくったたかしげ宙。これまたわりとオーソドックスなカタチのヒーローもので作画もしっかりしてるし、あとは好みの問題としかいいようがない。

 正直新しく開始したにしては作画がかなりのハイレベル揃い(一世を風靡した岡崎つぐおもいて、相変わらずのシャープな作画)で、ストーリーもそれぞれ味があり、新規雑誌としては十分読みごたえがある。紙媒体と違いたった8作品でも開始できるというのはよかったんだろうけど、しかしまだまだマイナーなYahoo!コミックのサイトで今乱立している無料マガジンの中、どれだけ読者を伸ばし単行本化で売れるか、ちょいと心もとないのは確か。よくYahoo!コミック読んでいる自分ですら、コミック・ガンボはほぼ読まず単行本になって初めて『坊ちゃん』が漫画化されてたこと知ったくらいだし。上に上げたものはどれもおもしろいと思うが、見せ方としてはマガジンの大黒柱にあたる『ジ・エンド』は正直ちょいインパクトが弱い気もするし(漫画はよくてもタイトルとビジュアル的には)。あっさり終わらずがんばってほしいものです。
 ともあれ楽しみが増えたのは素直に感謝しましょうか。

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コメント

 おすすめ(?)の作品を、読んでみました。やはり(?)、馬場民雄『火星のココロ Beautiful Little Garden』が最も気になります。
 良くも悪くも(?)、『デカ教師』第一話よりパンチが効いてませんね。謎めいているのは共通していますが……。世界観を共有していても、これで他作品のようにヒーローものになるのかしら?、心配になりました(笑)。
 左開きに関しては、学研の理科系学習雑誌「○年の科学」連載漫画や理科系ハードカヴァー学習漫画を思い出しました。遠大な野望(笑)に関しては、思い浮かびませんでした。

投稿: 翡翠 | 2007/11/04 23:40

 『火星のココロ』は主人公の女の子が良い子すぎるのかもしれません。馬場作品の主人公は(特に少年は)殆どおとなしめのいわゆる良い子なのですが、芯には強いものを持っていて、第一話で大体何かと出会い新しい道を見つけます。今回のココロの場合は、仔犬と出会うけどそれでまだ何かを自分の中に見つけたという感じではないし、熱血に走る感じでも無いので若干路線が違うように見受けられます。というか少女が主人公の話って、もしかして初めてかも(少なくとも連載ものでは見たことない)。

 ともあれ『デカ教師』に続いてちゃんと完結し、隠れた(いや隠れなくてもいいけど)名作になってほしいものです。今までの連載は人気あるとは思うんだけど、どうも終いが尻すぼみっぽくクライマックスのてっぺんは飛ばして終わりみたいに感じられたので(『大介ゴール』とか『虹色ラーメン』とか)。

>左閉じ

 といえば、私は「りりか」という雑誌を思い出します。サンリオが出してた女の子向けの雑誌で、手塚治虫の『ユニコ』という漫画が看板でした。変形A5版の真四角っぽい雑誌で左閉じで、子供心に不思議でした。

投稿: やずみ | 2007/11/05 00:50

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