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静かな丘の、そのまちで。

 サイレントヒル……かつてプレイステーションで発売され、スロースタートながら次第にその恐怖が口コミで伝わり、シリーズ化されるほどの人気となったゲームである。
 私も出た当時は特に気に留めていなかったが、廉価版が出たころだったか、ふと見た記事と評判に誘われ、なかなか見つからないところようやく見つけた一つを購入、プレイすることに。冒頭、当時としてはよくできたムービーと奇妙に物悲しくも恐ろしい未来を予見させるかのような音楽に次第に引き込まれていく。そして町を彷徨い始めいきなりの恐怖体験! 霧の向こうから聞こえてくる音に怯えつつ反撃、謎解き等々少し慣れ始めたと思ったとき、町が反転、暗闇と赤錆の覆う町、精神を逆撫でするような擬音とともに、とんでもない恐怖が襲いかかってくる……。

 まさにゲーム史上に残る名作ホラーである第1作をベースに、2作目以降もフューチャーした、映画「サイレントヒル」がついに公開された。大きな変更点は二点。まず主人公が男性から女性に変わった。実際ゲームでは父と娘という要素にこだわる面はあまりなく、女性にしたほうがより母性本能に訴える視点がつけられるため、これは正解だろう。第二にサイレントヒルという町が今は死に絶えた廃墟であることが事実だということ。ゲーム第1作ではサイレントヒルは風光明媚な田舎町として普通に存在している町である。ただ冒頭から主人公が迷い込んでしまったのが現実の町ではないというだけで……。この変更も映画のコンセプトに沿ったもので、ゲームほどの長さが取れない映画の場合、妥当だったと思う。映画の主人公の夫と警部が歩く現実の町と霧の町との対比が分かりやすく、ラストへの伏線にもなっている。

 映画冒頭、いきなりゲームのメインテーマが流れてきたときはグっときたもので、サイレントヒルへ向う最中にラジオからゲームでも流れた歌(英語の歌詞)が流れていて、それがノイズで消えるあたりはもう物凄く盛り上がり期待したものですが……。

 ネタバレは無しで感想を述べると、全体的にはかなり忠実で、映画史上に残るとは言わないがゲーム原作の映画化としては大成功、ホラー映画としても映像美はまあまあ、クリーチャーも見せ方はまあまあ、オチはどうしてもホラー映画史上に残る傑作とダブるためにまあまあ、それと音楽の使い方で余韻もまあまあ……ううむ、大傑作とはいわないまでも凄くおもしろかったのだけどどうしても点が辛くなるな……。一番は町のセットとか美術、二番目は俳優、三番目に音楽ときて、シナリオがどうしてもラストに来てしまうのはどういうことか。やはりあのラストなのに余韻がイマイチ足らないのは、音楽のせいだろう。冒頭でも少し流れたゲームのメインテーマのような静かだがじわじわ迫るような曲をラストカットからスタッフロールまでそのまま流したら物凄くよかっただろうに……。つくづくゲームの怖さは先の見えない映像と音にあったと思う。映画「リング」が原作とはまた別に怖いのは、そういうところがよくできてたから。

 美術とクリーチャーの造形などは満点。ダーク・ナースもゲーム通りではイマイチなかったけど、ナイスバディに凶器をもった顔のないナースという恐ろしい姿はしっかりつたわり、1シーンしか出番はないものの奇妙な動きもあいまっていい感じでした。霧の町から闇の町への変貌のCGなどとクリーチャーの動きは原作の再現としては最高でしょう。
 三角頭──レッド・ピラミッドはゲームそのまま。文句無しに怖くて強い。途中の斬殺シーン
などはすごかったけど、惜しむらくはカットとしての映像美にいたらない。これはラストの大虐殺のカットなどにもいえるかも。カットがちょっと冗長で、見せ場は案外陰影が弱い。静止画としてみるとなんかフツーに見えそう。他のクリーチャーの場面は陰影にとんでいてよかっただけに。レッド・ピラミッドの設定も1にはちょっとそぐわないので──ゲーム第2作に出てきた本来の設定とは決定的に違う──映画の存在理由はわかるがただのコマみたいなもので、原作のファンには納得しづらいかも。
 俳優はおしなべてすばらしいが、特に主役の母親と娘がいい。婦人警官もいい。まあ途中の退場劇でまさかと思ったら、そのあとの経過にさらに愕然としたけど。ゲームでも普通に進めたら大抵殺してしまうんだけど、これほどはひどくないし。クリーチャー自体はともかく後半の残酷描写は12歳以下禁止くらいのレートでほんとにいいのか。個人的には大丈夫だが──本来のスプラッターほど強烈に見せない──反射的に嫌うひともいるだろうな。

 ともあれ、二度見てもかまわない、いやむしろ二度は最低見たい映画でした。

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コメント

 映画としては、まとまりよく上手くできていて、傑作とはいえないですが良作だと思います。

 映像の見せ方が素晴らしいです、町のシーンの表現には唸ってしまいました。惜しむべきはシーンに湖が出てこなかったこと(笑)。(遠目には出てきたけど)
 クリーチャーも良くできていましたね、三角頭はちゃんと断罪者として動いていたようですが、表現として物足りないです・・ゲームらしいといえばその通りなのですが、映画として分かり易くして欲しかったところかな。
 
 後半、ダーク・ナースの登場以降の話の展開が駆け足なのか冗長なのか今ひとつメリハリがなかったのが残念です。説明台詞が多いのも気になったし。(謎解きと説明は男性陣にやらせるべきだった)
 特に残念なのは大虐殺シーンですか、ここだけ変に浮いていましたね。このシーンが濃密ならラストの静かなシーンがダレなかったでしょうに。また、ラスボスを倒すクライマックスのような盛り上がるシーンが無かったのも消化不良を起こした原因かも。
# DVDとかのディレクターズエディションだと直されていたりして。

 ラストのオチは、個人的にはこの映画の趣旨に添った納得のいくオチではないかと思います。見せ方については、もう少し凝って欲しかったと思いますが。

P.S.
 結構エロエロな画面構成が多かったのが(¨;)

投稿: 神子秋沙 | 2006/07/10 21:20

 秋紗さん、こんにちは。
 カット割りとか構図がまさにゲーム、ヒントをたどるあたりもゲーム、ゲームファンには「あったあった、あんなのが」と満足できる映画でしたね。

 最初に違和感があったのは、恐怖シーンの一発目が霧の町でなく、いきなりサイレンが鳴って闇の町になっちゃうところ。確かに怖かったし──あの階段で世界が変わる場面、従来ホラー通りのスタンダードなつくりでしたね──映画の設定で考えるとわからなくもないのですが、ゲームのあの二段階の恐怖がちょっと弱まったのはもったいない気が。なによりシビルとローズが崖のところで襲われるシーンは霧の町ですからね、あそこだけ違和感が残る。

 三角頭は、ゲームは正体判明してなるほどとなりましたが、今回は単純にダーク・アレッサの手駒にすぎないのがね。結局アレッサの復讐のひとつとして死んだあとも手駒にされたってことでしょうから、ゲームよりキャラが弱いのはいたしかたなしでしょうが、特に最後がなかったのもあれかな。従来ホラーなら絶対最後にもう一度見せ場があってあの頭の中身が出てくるパターンですが……ラスボスに食われちゃった感があり。

 ダーク・ナース以後、真相が判明するあたりは説明的ですが、まあいいと思います。問題はやはり教会のシーンかな。特に必要ないカットが多かった気がしますね。ローズが到着するまでに。もっとスピーディーに、ドアをバンと開いてローズが入ったらすでに惨劇が……ってのでよかった。その前のシャロンを縛りつける前後のカットはいらん。

 あとやはり外でローズやシビルにはわからない事情をもっと観客に見せてくれるはずの男性陣が役立たずだったのが……。普通は謎解きのクライマックスにもっとからんできてもいいはずなのに。悲劇に苦悩しつつ善良な警部なんて珍しいのに、中途半端。実際ダーク・アレッサとの会話に挟み込んでいれば、もっとよかったかと。
 旦那はまだしも、警部に緊迫感がないんですよね。過去を封印したいのだろうけど、行方不明のシビルは心配じゃないのか。

 大虐殺シーンですが、あれが冗長なのは、中途半端だったからかも。憎しみの中心である彼女をゆっくりと殺すのはまああれだけど、その他の人々も殺してまわるわけですが、ローズに絡む人以外あまりはっきり出てこない。うようよとうねってるアレもスピード感に欠けるので、カット割りで緊迫感も見せられると思うのだけど、それも弱い。というかベッドが出てくるあたりもノロい。ディレクターエディションでもっとスピーディーにしてほしいものですが、普通DEだと長くなるんだよなぁ……。

 オチはね……サイレントヒルらしいエンドの一つではありますが。んー、やっぱり余韻がもうちょっとほしかった……。ソファのこちらとあちらの対比とか、何故か開いているドアを閉める旦那とかはよかったけど。

 DVDでもう一度見たいですね。余裕があれば千円デーの時に映画をもう一度。

投稿: やずみ | 2006/07/10 23:24

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