« 2005年3月 | トップページ | 2005年5月 »

ぺとぺとさんがやってくる。

 ええと、数ヶ月前のことです。
 いつものように本屋でジュヴナイル(いまはライトノベルというのがほとんどか)の棚を検分していた私ですが、新刊のところでみょうなものを見かけました。『ぺとぺとさん』というタイトルと、普通に可愛い女の子と妙だがやっぱり可愛い物体という表紙絵。これが最初の出会いです。キャラデザはみな丸く柔らかなラインでローティーンぽさもあり、そして設定が人間と妖怪の共存ものだけどアクション特に無しということで、地味めのほわほわした物語のようでした。ただ、そのときはほのぼの系を読みたい気分ではとくになく、他に買うものがあったのでスルーしてしまったのです。ロリ系に興味は無いのです(実際はロリ系ではなかったんですが)。
 その後数ヶ月して、続編の『さよなら、ぺとぺとさん』が出ました。「いきなりさよならかいっ?!」 可愛いしそれなりに売れたんだろうけど二回目で終わらせられるくらいにしか売れてなかったんかなーと思ったものです。そのときも他に優先するものがあったので、また(購入予定)予備に回してしまいました。
 二度あることは三度ある、最後の出会いが、おおっぴらには言えないのですが「ふるほにゃ」でした。──だからおおっぴらには言えないんだって。おお、これが入ってたかと手にとって数ページ読んだところ、概要と見た目でだまされていたことに気づきました。それで即効買って、続編も本屋で入手、読破しました。

 確かに表紙から感じられるほわほわした雰囲気はありますが(主に主役のぺと子とシンゴの性格による)、妖怪をめぐる状況というか、ぺと子やくぐるの家庭環境などは意外にシリアスなものだったし(別に謎の組織の暗躍とか差別排斥をめぐるものではありません)、妖怪を特定種族として受け入れている、しかしそのための措置は……など他のファンタジーのようにそこにあるからそのまま、なんてそれで終わらせていない確かな骨子があります。思うに多少ぼかしてシリアスな状況を描く文章のクセが、状況をハードにさせ過ぎず、少年少女のピュアな恋ものとしてうま味をかもしているのではないかと。

 次にステロタイプに陥ってない、微妙なキャラクター造形がまたいい。
 主役のぺと子はぺとぺとさんという新種の妖怪(父は人間、母が妖怪で、第一世代)。見た目は人間と変わらないが、好きなものと触れるとくっついてしまうという性質を持つ(自分と相手が意識をなくすと離れる)。存在が気分によって気薄になるため、気分によって足音が変わる。性格はおとなしくいつもにこやかだが、自分の存在への自信のなさの裏返し。
 シンゴはふつーの中学生。妖怪との共存テストケースのオオマガ中学でふつーの学生生活を送っているが、クラスメートのぺと子がちょっと気になる。能天気に笑ってるし無条件に優しいが、芯は強い。
 沙原くぐるはカッパ娘。見た目はまんま人間(皿など多少化けているが、本性出しても顔は美少女のまま)。手はすぐ出るし、博多生まれで口はかなり悪いが、中身は優しく正直者。恋には多少臆病なところもある。家庭の事情で家出して転校してきたが、いまはシンゴがちょっと気になる様子。実家は代々の極道で喧嘩上等、命のやりとりも土性骨がすわってる。
 この三人がメインでストーリーは展開していきますが、もう一人(とひとり)重要なサブキャラが。クラスメートに真壁ぬりえという女の子がいるんですが、本性はぬりかべ。女の子の姿をとってはいるけど、石や土が元なため体重はかなりのもので動きは遅く、代わりに壁や地面に潜ってずっと速く遠くまでいける。しゃべらないが広いおでこに文字が浮きでて会話する。見た目はぼーっとしているが、性格は優しくお姉さん気質。
 で、この小説のマスコットと言えるのが、ぬりえの妹のこぬりちゃん。手のひら大のぬりかべだが、つぶらな瞳と小振りな手足がキュート。ただし姉と違って力がまだ弱く人間の姿にはなれない(のちに短時間だけ変われるようになったが手のひら大は変わらず)。面積が小さいため、額?に浮きでる文字は一文字、長文の会話はかなりつらい。いやもー、これがknu
かわゆーてかわゆーて
 こんなに可愛い妖怪(本性のまま)ってのは多分これが初めてなんじゃないかと。まあ短い手足やつぶらな瞳にだまされてるってことですが、こぬりちゃんが見られるだけで、アニメ化のかいもあるってものですよ。

 ──そう、やっと本題ですが、『ぺとぺとさん』、アニメ化されます。もう驚いたのなんのって。確かに面白いけど、そんなにメジャーじゃないしなぁ……と思ってたら『マジキュー』って雑誌で確か漫画化されてたの思い出しました(読んだことない)。そのせいかも。原作もこの波にのって続編出ないかなぁ。『帰って来たぺとぺとさん』とかいって。

 原作は木村航。知る人ぞ知るメールゲームの会社出身で、小説は現在五冊出しています。処女作が『歌う虚 秘神大作戦』、次に『ぺとぺとさん』『さよなら、ぺとぺとさん』『ぴよぴよキングダム』『ぴよぴよキングダム2』です。処女作はメールゲームが舞台で出来はまあまあ。短い中にちょっと詰め込み過ぎな感もあります。あとの2シリーズはどちらもお薦めです。『ぴよキン』は1で十分完結してますが、ラブコメにバトルも入ってある意味分かりやすい話です。この話は顕著ですが、木村さんはリアルに感じられるエピソードの挿入するタイミングというか描き方が上手いですね。あざといとも言えなくもないエピソードですが、『ぴよキン』の主人公森山拓(ひらく)が正直になれない原因はなかなかイタいものがあります。現実でもしそんなことがあったら、そらトラウマになるわなと。2はどう見ても続くのでこれだけで評価は十分できませんが、賛否両論のようですね。私は面白かったですが。それまでのものよりもSF寄りでセンスオブワンダーを感じるいいジュヴナイルです。ちなみにこれも興味はあったものの初回は一度スルーして、2が出たあと気付いて買いました。一巻を本屋で見たときは『ぺとぺとさん』と同じ作者だと気付かなかったんです……だめだオレ。
 ──ま、まあ今後は名前買いするので、もう二度と同じ過ちはおかしません。多分。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2005年3月 | トップページ | 2005年5月 »