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あのころの蝉時雨が── ~カムパネルラの森~

 「ふたつのスピカ」──柳沼 行が描く珠玉の、永遠の夏のものがたり──

 コミックフラッパーで連載中の漫画「ふたつのスピカ」は、宇宙飛行士の夢を持つ若き少年少女らの青春を描く物語です。物語は単行本にも掲載されている読み切り短編から続いていますが、本編は一応主役の鴨川アスミと幽霊のライオンさん、影のある美少女マリカ、そしてかつて起きたロケットの墜落事故を軸に、それぞれのキャラクターの心情が細やかに描かれています。既刊5巻まで発売中。

 今、NHKのBS2-衛星第二11chでアニメ化されて毎週土曜日朝9時から放映しています。
 正直原作のファンのいくらかにはウケが悪そうなキャラデザイン──アスミなどは特に──ですけど、これはこれで悪くないし、シナリオは原作のイメージを崩さずいい感じです。制作はグループ・タック、監督・構成・脚本は望月智充でキャラクターデザインは後藤真砂子の御夫婦。どちらもこういう静かで日常の人情的なお話しでは定評があります。

 原作の雰囲気とは正反対に思えるアップテンポの主題歌「Venus say」も、曲の良さと歌詞のイメージ、コンテの良さで、主題歌としてぴったり。このOPを繰り返し流すためにも、DVDが出たら一巻は絶対に買わねばなりますまい──傑作であろうと予想される、見逃した第一話を見るためにも(笑)

 で、今年最初の放映、第九話「カムパネルラの森」。

 原作読んでない人間にはおそらく何がなんだかわからないシーンが多々ありますが──というかアニメも今まで見逃してるとよく分からないかも──そこでもう望月演出炸裂という感じでした。
 あれですね、人気取るには子役か動物出せとよく言われますが──ええ、ここでもそれでココやんたちを……あり、まだ出してないや──今回も子供たちのシーンが多く、特に冒頭とラストのモノクロのシーン、流れる音楽、まさに望月さんですよ、これは。二人きりの森、字幕で飾られたことば、静かで寂しい心情を思わせるリリカルな曲。原作よりも早くにこのシーンを差し込んだのもなかなか上手いけれど、アニメしか知らない人にはかなり意味深なシーンに。そのせいか、ラストに続く泣けるシーンが出て来ないのが残念ですが。いやー、原作に出た少年のころのライオンさんのこのエピソードは泣けます。……つくづくライオンさんって女泣かせな奴だわ。実際のところ、女性キャラの半分と関わりがあるわけだし。

 もちろん過去のシーン以外の、かつてライオンさんの婚約者だった鈴成先生のエピソードも素晴らしい。ここばかりは原作よりも表情など細やかに描かれている気がして、アニメ化して良かったエピソードと言えるでしょう。原作でも「スピカ」のサブエピソードと言えるライオンさんと鈴成先生のエピソードですが、なにせ既に死んでいる人間と生きている人間の想いがテーマだけに哀しいものがあり──まともに見えず話もできない──、第一話含めてどれも名作といえます。

 原作では受けるイメージや世界観の中で作画にかなり重きがあると思いますが──シナリオだけでは時にベタな印象しか受けないきらいがあるが、独特の作画で実に効果的に泣かせてくれる──アニメではどうしても作画に蹴られる感じもあります。ですが今回の話は作画が安定してるのと、正直他のキャラよりも一般的な鈴成先生がメインで他が子供のせいか、全くきになりませんでした。大人の女の心情を描くにはちょうど良かったのかも。

 光源もさほど強くなく、夏らしい画作りというわけではありませんが、かつてOAV 「蝉時雨」で見せた静かな望月演出を思い出させる良いエピソードでした。ああっ、第一話の夏の花火が見てみたい~(やっぱ買うしかないのか。それとも地上波に来るのを待つか)。

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